ボールミルの新形状
2025-11-12 14:11:24

新発見!ボールミルの粉砕効率を劇的に向上させる形状「OPTIPSE」の可能性

新しいボールミル媒体「OPTIPSE」とは?


ボールミルといえば、円筒形の容器の中にボール(球形)の媒体を入れて運用される粉砕装置です。100年以上にわたり使用され続けてきたこの方法ですが、実はその形状が粉砕効率に制約を与えていることがわかりました。最新の研究によると、球形の媒体ではなく、新しく設計された「OPTIPSE」と呼ばれる形状が、効率的に粉砕を行えることが実証されています。

OPTIPSEの特性


国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)の上田高生主任研究員が開発したこの新しい形状は、約5500種類のランダムな3次元形状から選ばれました。「OPTIPSE」は、楕円体を軽く潰したような歪な形状を持ち、これにより粉砕対象物をより効率良く挟み込むことが可能です。

粉砕効率の向上


ラボでの実験では、OPTIPSE形状のアルミナ製媒体が、従来の球形媒体より約10%も高い粉砕効率を達成しました。ボールミル使用時のエネルギー消費も大幅に削減できる可能性が見えてきました。特に選鉱分野やセメント製造業など、エネルギー効率の向上が求められる場面での活用が期待されています。

ボールミルの問題点とは?


通常、ボールミルのエネルギー効率は非常に低く、投入エネルギーの1%未満が実際の粉砕に利用されているという報告もあります。この低い効率は、粉砕対象物と媒体との接触面積の不足が主な原因です。この問題に対処するため、研究チームは非球形の新しい媒体形状の開発に乗り出しました。

数値解析による形状設計


特筆すべきは、球面調和関数を用いた数値解析により、最適な形状を導き出した点です。生成された多様な形状をもとに、接触面の大きさを解析することで、粉砕効率を最大化する形状「OPTIPSE」が最終的に選択されました。これにより、粉砕された微小粒子の生成比率が向上し、結果として粉砕効率が大幅に改善されたのです。

実験による検証


実験では、OPTIPSEと従来の球形媒体を比較し、粉砕結果を量的に評価しました。その結果、OPTIPSEはすべての条件下で多くの微細粒子を生成し、その効率が約7%から16%向上していることが確認されました。

特に、OPTIPSE形状の媒体は、球形のものよりも粉砕対象物に強い衝撃力を与え、これによって接触面積が広がり、効率が向上することが示されました。このような結果を受け、さらに高性能な媒体形状の設計技術の開発が期待されています。

産業応用の未来


今後の展望として、OPTIPSEを工業的に活用するためには、実際の操業条件下での実証が必要です。これに向けて、企業との連携や研究機関との協力が進められています。また、OPTIPSEの形状を基に、ボールミルの内部構造や操作条件に合った専用の媒体形状の設計も考慮されています。

この新技術が普及することで、ボールミルの効率化が図られ、資源の有効活用が推進されることが期待されます。

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研究の詳細は、論文「Efficient ball mill media shape design using spherical harmonic functions」で発表されています。この研究成果は、今後の粉砕技術の発展に寄与し、多くの産業へ影響を与える可能性を秘めています。


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