米国EV市場における消費者の関心動向
J.D. パワーが発表した最新の調査結果によれば、米国における電気自動車(EV)の購入検討意向は、依然として安定していることが明らかになっています。この調査は、2025年のEV市場における消費者の興味と関心を測定するもので、新車購入を検討している消費者およびその購買意向に関する貴重なデータを提供しています。
調査の概要
調査は、2025年1月から4月にかけて、8,164人の新車購入を考えている消費者を対象に実施されました。その結果、EVの購入意向が「非常に高い」とする回答者が24%、「ある程度検討している」が35%という結果が示され、昨年と同様の水準を維持しています。これは、経済的な逆風にもかかわらず、消費者のEVへの関心が根強く存在することを示しています。
購入意向とブランド比較
特に興味深いのは、EV購入希望者が幅広いブランドを比較検討している点です。EV購入に対する意向が「非常に高い」層は、平均2.9のブランドを比較し、「ある程度検討している」層でも平均2.8ブランドを比較しているとのことです。一方で、従来のガソリン車購入希望者は平均2.5ブランドの比較に留まっており、EVに対する関心の広がりを感じさせます。
また、調査によると、EV製品にはマスマーケットブランドとプレミアムブランドが同様に検討されています。これは、消費者が新たなブランドやモデルにも目を向ける傾向があることを示唆しており、各自動車メーカーには新たな顧客を獲得するチャンスがあるかもしれません。
充電インフラと維持費への懸念
しかし、EVの普及においては、充電インフラが消費者の懸念材料として大きな壁となっています。調査において、EVを拒む理由は「充電インフラの不足」が52%を占め、依然として大きな課題であることが浮き彫りになりました。さらに、充電に対する消費者への啓発活動が不足していることも示され、この問題に対する解決策が求められています。
とはいえ、購入価格や維持費に対する懸念は軽減してきており、前年比でそれぞれ43%と33%へと減少しています。これにより、価格面でのEVの競争力が高まっていることがうかがえます。
年代別・所得別の関心
若い世代や高所得層の中でのEVに対する関心が高い一方で、両者の重なりが少ないことも特徴的です。特に25歳から49歳の層で年収10万ドル以上の割合はわずか17%に留まっています。若年層は経済的な制約から購入が難しい場合が多い一方で、年配層は関心が低い傾向があります。このことは、マスマーケットブランドのEVが成長をけん引している現状を暗示しています。
地域による関心の差
地域によるEVへの関心も色濃く表れています。特に米国中西部のウィスコンシン州やケンタッキー州ではEV購入意向が非常に低く、こんな挙動は寒冷地特有のEV性能への懸念や、伝統的な自動車ブランドへの忠誠心が影響していると考えられます。
今後の展望と課題
J.D. パワーのブレント・グルーバー氏は、市場の変動の中にあっても、EVは消費者にとっての新たな選択肢として確立されていると述べており、今後は消費者の期待に応えるため、より適切な商品提供と啓蒙活動が求められています。特に、公共充電の利便性については、実際にEVを所有することで解消される側面もあることが指摘されています。
これらの結果は、EV市場が成熟しつつある一方で、まだまだクリアすべき課題が多いことを示しています。今後の動向に注目が集まります。