押井守監督も絶賛したROSTOの魅力とは
オランダの映像作家ROSTO(ロスト)の作品が、ついに日本で一挙上映されることが決定しました。題して「存在証明」。この特集上映では、彼の遺作である『四つの悪夢』と、それに関連したドキュメンタリー作品が一堂に会することとなります。
ROSTOのコンセプトと初期作品
すべてはROSTOの独特なコンセプト『Mind My Gap』から始まりました。1990年代初頭、彼は自身の製作スタジオ「ROSTO A.D’s」を設立し、CFやミュージック・ビデオの制作に取り組みつつ、短編映画にも挑みます。特に、2002年に発表した「(伝説の)アングロビリー・フィーバーソンの興亡」と2005年の「ジョナ/トムベリー」は、カンヌ国際映画祭で受賞したこともある名作です。これらの短編は、ミクスドメディアプロジェクト『Mind My Gap』の一環として、グラフィックノベルや音楽とのクロスオーバーを追求した先駆的な試みとして評価されています。
存在しないレコードの誕生
受賞後、ROSTOはかつて所属していたパンク・バンドTHE WRECKERSを甦らせ、4連作『THEE WRECKERS TETRALOGY』を15年の歳月をかけて完成させます。この作品は、彼が12年間あたためてきた脚本から生まれたもので、実際には存在しないレコードのミュージックビデオとも位置付けられています。作品群の中から特に注目すべきは、初期の短編に続く『うちが一番』(2008年)、『孤独な骨』(2013年)、『スプリンタータイム』(2015年)、『再生』(2018年)という4つの短編です。
終焉を迎えたROSTO
残念ながらROSTOは2019年に病気によって急逝しましたが、その後も彼の作品は広く愛されています。友人でありプロデューサーのミハエル・シュマーキンは、彼の作品をまとめたオンライン・グラフィックマガジン『Mind My Gap』を特別仕様の書籍として出版。さらに、全国各地で『四つの悪夢』とドキュメンタリー『すべてが変わったようで、何も変わっちゃいない』が上映されたのです。これにより、ROSTOの才能が再確認され、多くのファンが彼を慕うきっかけとなりました。
映画祭での評価
『四つの悪夢』は、第1回新潟国際アニメーション映画祭のコンペ部門に選ばれ、その際に押井守監督から「境界賞」を授与されるなど、その多才な表現力が高く評価されました。また、ラジオ・パーソナリティの宇多丸氏もこの作品に強い印象を受けたというエピソードは、多くの人々の記憶に残っています。
上映情報
この貴重な上映は、2023年8月16日(土)からシアター・イメージフォーラムで先行公開され、その後全国で順次展開される予定です。日本ではまだ知られていないROSTOの才能を再発見し、彼の作品の数々を目にする機会をお見逃しなく。
まとめ
ROSTOの映像作品は、ただの映画にとどまらず、音楽、アート、ストーリーが交差する独自の世界を構築していました。彼が残した数々の作品を通じて、人生の旅や過去の記憶、そして存在意義について考えてみることができるでしょう。上映を通じて、日本中のファンが彼の魅力に再び触れることを願っています。