亡き兄の想いを受け継ぐ「フットサルリボン」
2023年12月16日、神奈川県にある子ども向け医療施設で行われた「フットサルリボン」の活動は、第5回目となりました。活動は2021年以降、新型コロナウイルスの影響でオンラインに縮小されていましたが、2023年8月から対面での活動が再開。故・久光重貴氏の思いを受け継いだ弟・邦明さんによって、変わらぬ笑顔が広がるスペースが生まれました。
施設内に足を踏み入れると、心を温かくするクリスマスの装飾が目に飛び込んできます。体育館には大人と子どもが約15人集まり、ボールを蹴り合いながら楽しそうに語らう風景が広がっています。この場所は、「フットサルリボン」の活動が根ざす、子どもたちの心に寄り添う場所です。邦明さんは、「ここでは、体は動かせるけれど、病気や障がいを抱える子どもたちが集まり、共にボールを蹴っています」と語ります。
邦明さんの根底にある想いは、病気を抱える子どもたちに目標や夢を与え、その達成に向けたエネルギーを育むことです。「子どもたちが頑張る力や、治療を乗り越える力の源を生み出す手助けになれば」と、子どもたちが心から楽しめる空間を作り出しています。
活動に参加する一人、「大志」くんは、車椅子に乗る少年です。彼の母親によれば、「周囲の子どもたちが成長する姿が刺激になり、彼も挑戦するようになった」とのこと。12月1日には湘南国際マラソンに参加し、車椅子でも出場できる1.4kmのラン&ウォークを見事にやり遂げました。
重貴さんは、2013年にがんが発覚し、以降7年間闘病生活を送り三度目のフットサル教室を開催していました。彼は、病と闘う子どもたちのために、フットサル教室や病院訪問を行う一般社団法人「Ring Smile」を設立しました。しかし、重貴さんがこの世を去った後、兄から「この思いを引き継いでほしい」と頼まれた邦明さんは、迷うことなく彼の意思を継ぐことを決意しました。
新型コロナの影響で、活動はオンラインで行われることが多くなり、仲間たちとの絆はきっと強くなったことでしょう。今年8月に対面での活動が再開され、多くの参加者がその瞬間を熱望していました。
参加者には、Fリーガーの田村龍太郎選手も。彼は「走れる・走れない、速い・遅いにかかわらず、皆で楽しむことが目的」と語ります。ウォーキングフットボールというルールの下、全員が歩いてプレーすることで、小さな喜びも皆で分かち合います。
邦明さんにとって、兄の思いを形にするための試行錯誤の日々が続いています。しかし、根底にある「笑顔の連鎖」というメッセージを広めることで、この空間は心温まる場所となりました。子どもたちの笑顔はもちろん、親たちやボランティアの大人たちも自然に笑顔になっていく、まさに皆で一緒に成長し合える瞬間がここにあります。
田村選手も「最初は子どもたちに元気を与えられるかと思っていましたが、自分が逆に支えられていることに気づきました」と語るように、邦明さんも同様の思いを抱いています。重貴さんがこの世を去ってからちょうど4年。邦明さんは今後も、兄の思いを受け継ぎ、フットサルリボンの活動を続けていく決意を表明しました。