国立文楽劇場で味わう歴史情緒溢れる特別公演の魅力
2023年9月6日から10月14日まで、国立文楽劇場で楽しめる「爽秋文楽特別公演」が現在開催されています。文楽ファンのみならず、これまで鑑賞したことがない方々にとっても、ぜひ足を運んでいただきたいこの公演。特に注目すべきは、三つのプロに分かれた演目の数々です。
各プロの魅力を紹介
Cプロ(11時開演)『曾根崎心中』
近松門左衛門の名作で、元禄16年(1703年)初演のこの作品は、当時の社会問題を反映した心中の物語です。物語は、江戸時代に上演が途絶えましたが、戦後の復活上演以来人気を集めています。特に、徳兵衛がお初の足首を掴む印象的なシーンは、多くの観客を魅了しています。この場面では、愛の力と切なさが存分に表現され、文楽ならではの深い感情が伝わってきます。また、戦後の日本でもアートとしての価値が再認識されている今、文楽の持つ魅力を再確認できる機会です。
Bプロ(14時開演)『心中天網島』
享保5年(1720年)に初演されたこの作品も、やはり近松門左衛門のものです。治兵衛と小春の心中を描きつつ、周囲のキャラクターたちの心理描写が深く掘り下げられています。このことから、観る側は主人公だけでなく、周囲の人間関係にも思いを馳せることができます。『曾根崎心中』との違いを楽しみながら観賞するのも一興です。
Aプロ(18時開演)『恋女房染分手綱』『日高川入相花王』
『恋女房染分手綱』は、名家に仕える乳母の重の井が、長い時を経て再会する息子との愛と社会的立場の間で葛藤する物語。一方、『日高川入相花王』では、嫉妬に駆られた清姫が安珍へ向かう様子が描かれます。特に、清姫が蛇となる変化のシーンは、目を見張るものがあります。この二つの作品は、母性や愛情の形を考えさせられる内容でもあり、観客の心に深い印象を残します。
初めての方でも安心のサポートが
文楽が難しいというイメージを持たれがちですが、安心して楽しむ方法があります。国立文楽劇場では、無料の字幕サービスが用意されており、あらすじや見どころを紹介する同時解説イヤホンガイドは800円で利用できます。詞章が掲載された床本付解説書も700円から購入可能ですので、初めての方でも安心してご鑑賞いただけます。
上演時間の変更に早めのチェックを
なお、後半日程に入った今回の公演では、AプロとCプロの上演順が変更されています。前半の11時開演から18時開演だったものが、後半ではCプロが午前11時、Aプロが午後6時に演じられます。Bプロは変わらず14時開演ですので、しっかりとスケジュールをチェックしてから訪れることをおすすめします。
大阪生まれの伝統芸能、文楽を体験しよう
文楽は大阪の伝統芸能として親しまれていますが、観賞するのは難しくありません。「わかる」楽しさを体感できる絶好の機会です。この秋、ぜひ国立文楽劇場で素晴らしいアートに触れてみてください。皆様のご来場をお待ちいたしております。