未来の声の資産を守る新たな音声データベース「J-VOX-PRO」がスタート
近年、生成AI技術の進展に伴い、実演家の声を模倣した音声コンテンツが無許可で流通する事例が増えています。この状況は、声優や俳優などの実演家にとって深刻な問題であり、人格的・経済的権利が十分に保護されていないというのが現状です。このような課題に対処するため、協同組合日本俳優連合(以下、日俳連)、伊藤忠商事株式会社、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社の3社は新たな音声データベース「J-VOX-PRO(仮称)」を立ち上げました。
「J-VOX-PRO」の目的と取り組み
この音声データベースは、実演家の声を安全かつ適切に保管したり、その利用を管理したりするための新たな基盤となります。具体的には、以下のような目的を持って運用されます。
1.
不正利用の対策
無断で生成された音声コンテンツに対し、通報体制を構築し、損害賠償に向けた対応フローを整備します。
2.
権利の保護
実演家の意思表示をもとにした利用範囲の明確化や、透明性のある契約書のひな形を整備します。
3.
政策提言と法整備の推進
業界全体で合意形成を図り、健全な音声ビジネスのためのルールを策定していきます。
4.
教育・啓発活動の実施
実演家への権利教育や、開発者・ユーザーに向けた倫理観の啓発を促進します。
5.
音声の保管と利活用基盤の整備
実演家の声を高品質な音源としてデータベース化し、安全に管理できる環境づくりを行います。
「J-VOX-PRO」の展望
「J-VOX-PRO」は、日本の文化資産を守るための利用基盤として機能します。このデータベースでは、法人利用が主軸となり、利用希望の企業や団体は所定の料金を支払って音声データを合法的に入手できます。また、音声データには電子透かしや声紋などのセキュリティ技術が適用され、不正利用を防止します。実演家本人の意志表示はデジタル化され、企業とのマッチングが容易になります。
声の利活用の可能性
このデータベースの音声は、教育、医療、観光など多様な分野での活用が期待されています。たとえば、行政情報や高齢者向けの診療説明、さらには多言語音声ガイドなど、多様なニーズへの対応が可能です。音声認識市場は今後13兆円規模に成長すると予測されており、国内での利用を経て、海外展開を目指しています。これに伴い、日俳連、伊藤忠商事、CTCは連携し、権利保護と収益機会の拡大に取り組むことで、新たなビジネスの創出に貢献していきます。
これらの取り組みを通じて、実演家の声を守り、より健全で持続可能な音声ビジネスの発展を目指していきます。「J-VOX-PRO」の始動は、その為の大きな第一歩と言えるでしょう。今後の展開にも要注目です。
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