研究背景
乳がんは女性が最も多く罹患する癌であり、そのリスクは多くの要因によって影響を受けます。近年、遺伝的要因がその発症に大きな役割を果たすことが分かっていますが、心肺体力がこのリスクに与える影響が注目されています。早稲田大学スポーツ科学学術院の研究グループが行った新たな研究は、心肺体力が遺伝リスクをどのように軽減するかに焦点を当てています。
研究概要
今回の研究は、英国の「UK Biobank」に登録された閉経後の女性15,199名のデータを利用しています。心肺体力と多遺伝子リスクスコア(PRS)が、乳がん発症の相関関係を探ることが目的です。研究の結果は『Medicine & Science in Sports & Exercise』に掲載され、遺伝的リスクの影響を軽減する可能性が示されました。
研究の方法
心肺体力は最大酸素摂取量(VO₂max)を基に評価され、乳がん発症リスクは10年以上にわたり追跡されました。その結果、心肺体力が高い女性では乳がんリスクが低下する傾向があることが確認されました。468名が新たに乳がんを発症した中で、心肺体力が高い群では発症リスクが著しく低下していることが分かりました。
研究発展
特に、心肺体力が高い女性の場合、高いPRSがあっても乳がん発症リスクの上昇が小さくなる傾向があることが明らかにされました。この研究結果は、心肺体力が乳がんリスクの軽減に寄与する可能性があることを示しています。さらなるデータ解析により、心肺体力で遺伝リスクを軽減するメカニズムについて解明を進めるべきでしょう。
社会的影響
この研究は、乳がん予防に向けた新たなアプローチを示唆しています。心肺体力を高めることが、遺伝的要因によるリスクを軽減する可能性があるため、日常生活において運動や身体活動を積極的に取り入れることが重要です。
今後の課題
とはいえ、心肺体力と乳がん発症の関連を確立するためには、さらなる研究が求められます。特に、他の集団においても同様の結果が得られるかどうか、精度の高い測定法を用いて確認することが必要です。また、心肺体力の変化についても、長期的な追跡調査を行い、因果関係を詳しく検討する必要があります。
研究者の見解
谷澤准教授は、今回の研究が「遺伝的リスクが高くても、心肺体力の養成により乳がんリスクを軽減できる可能性がある」と述べています。今後の研究で、生活習慣や運動の影響を考慮した個別化予防が進むことが期待されます。心肺体力を高める意義が、乳がんを含む様々な疾患におけるリスク管理に繋がることを目指します。