次世代車載モータの開発に向けた強磁性窒化鉄系磁石の革新

2025年、日本の三恵技研工業株式会社、株式会社ミツバ、そして株式会社Future Materialzが共同で開発した強磁性窒化鉄系磁石が、注目を浴びています。この磁石は、次世代の車載電装モータとしての応用が期待されており、その性質や技術的進展が多くの業界関係者によって評価されています。

新たな磁石の背景

次世代モータの研究開発では、効率良く、かつコンパクトなデザインの永久磁石の需要が高まっています。特に、電動車両や省エネ家電を支えるネオジム磁石の性能は重要ですが、これらの磁石に使われるレアアース元素に対する依存度が高く、供給不安が指摘されています。今回の強磁性窒化鉄系の開発は、これらの課題を克服し、安定した供給を目指す新しいソリューションを提供します。

強磁性窒化鉄系磁石とは何か?

強磁性窒化鉄系磁石は、強磁性窒化鉄（Fe16N2）とサマリウム鉄窒素（Sm2Fe17N3）を基に作られるナノコンポジット磁石です。1972年、東北大学の高橋教授によって初めて提案された強磁性窒化鉄は、近年に入り、技術の進展によって大量生産が可能となりました。サマリウム鉄窒素は、特に重希土類を代替する材料として期待されています。

新しい磁石は、レアアースの使用量を大幅に削減しており、供給リスクを軽減。さらに、異なる磁石成分をシームレスに組み合わせて、用途に応じた特性調整が可能であるため、幅広い応用が見込まれています。

開発の成果と特徴

この強磁性窒化鉄系磁石は、圧粉成形と射出成形のどちらでも製造できる特性を持ち、設計自由度が高くなっています。特に、ミツバが実施した評価では、強磁性窒化鉄系磁石を使用した車載電装モータが高い性能を発揮し、実際のデータが計算値とほぼ一致することが確認されています。このことは、技術の実用化に向けた重要なステップです。

最近のレアアース市場における問題を考慮すると、ほぼ鉄と窒素のみで構成されているこの磁石は、価格と供給リスクの面でも根本的な優位性を示しています。従来のネオジム磁石に必要な重希土類元素は一切含まれていないため、今後の市場でも競争力を持つ製品と言えるでしょう。