新たな通信技術がもたらす未来
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が、次世代の通信基盤となるミリ波とテラヘルツ波を統合したビームフォーミング通信技術の実証に成功しました。これは、6G時代の超高速・高信頼性通信を実現するための画期的なステップです。
1. 成功した実証実験の概要
NICTの研究チームは、まずミリ波(60 GHz帯)とテラヘルツ波(300 GHz帯)を統合的に運用する独自のアーキテクチャを開発しました。このシステムでは、ミリ波を「ビーム制御・追尾・接続維持」に利用し、テラヘルツ波を「大容量データ伝送」に特化させることで、両者の特性を最大限に引き出しています。
特に、通信環境の変化に応じて、テラヘルツ波の通信が途切れた際には、瞬時にミリ波に切り替えるという高度な自動切換え機能を実現しました。この技術により、従来のテラヘルツ通信で問題とされていた遮蔽や接続断の課題が大幅に改善されました。
2. 通信技術の背景と必要性
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展、IoT機器の急増、そしてAI技術の高度化に伴い、社会全体でのデータ通信量が急増しています。現行の5G通信では、将来の需要に応えきれない可能性があるため、「Beyond 5G」や「6G」のための基盤技術の確立が不可欠です。
特にテラヘルツ波は、従来のマイクロ波に比べ数倍から数十倍も広い周波数帯域を持ち、理論上は数十Gbpsを超える高速通信を実現できる可能性がある技術です。これにより、XR(クロスリアリティ)や超高精細映像伝送、スマートファクトリーなど、次世代のサービスを支える基盤となることが期待されています。
3. ビームフォーミング技術が解決する課題
テラヘルツ波通信には「遮蔽」や「接続断」のリスクがありますが、ビームフォーミング技術がその解決のカギとなります。この技術は複数のアンテナ素子を利用して電波の強度や位相を調整し、特定の方向にエネルギーを集中させることで通信の品質を向上させます。しかしテラヘルツ波は非常に鋭い指向性を持ち、ユーザーのわずかな移動で通信断が発生するため、精密なビーム追尾技術が求められます。
本実証では、比較的安定性の高いミリ波通信と超高速なテラヘルツ波通信を組み合わせました。ミリ波は伝搬特性が優れ、遮蔽にも強く、すでに5Gで商用化が進んでいます。
4. 今回の実験結果とその意義
実験では、受信機の位置が変わるたびにビーム方向を適切に調整し、通信が途切れないようにどちらの波を使うかを自動で切り替えることに成功しました。伝送速度も、テラヘルツ波を利用することで最大7.5 Gbpsを達成し、広範囲なビームフォーミング能力も実現しています。
5. 今後の展望と期待
これからの研究では、テラヘルツ波の帯域幅拡大や、アンテナ素子の多様化を目指し、通信品質のさらなる向上を図ります。これにより、通信方法の標準化と実用化へとつなげることが期待されています。今回の成果は、2026年5月27日(水)より東京ビッグサイトで開催される「ワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク2026」にて展示される予定です。
新時代の通信技術が、私たちの生活や産業に革新をもたらす日も近いかもしれません。