自動車音響革命、旭化成エレクトロニクスとDiracの協業
近年、音響技術はますます進化しており、特に自動車業界においては、その重要性が増しています。旭化成エレクトロニクス株式会社が導入したのは、スウェーデンの音響テクノロジー企業Diracの「AudioIQ」技術です。この連携により、同社のオーディオ用デジタルシグナルプロセッサー(オーディオDSP)が自動車内での音響体験をさらなる高みへと引き上げました。
AudioIQがもたらす凄み
DiracのAudioIQは、音響補正の分野で高い評価を受けており、特に電気自動車(BEV)のような新たな移動手段でも活躍を見せています。これにより、従来のオーディオDSPの使い方に新たな可能性をもたらし、透明性のあるサウンドや高い空間表現が実現されています。
さらに、長年にわたり20億以上のシグナル処理をしてきた実績を持つ旭化成のオーディオDSPは、Dirac社の高度なアルゴリズムを活用して、車種毎の音響特性に応じたチューニングを簡素化し、工数削減にも寄与しています。これにより、自動車メーカーは、効率的にかつ迅速に開発を進めることが可能になります。
フラッグシップモデルAK7709
特に注目すべきは、旭化成のフラッグシップモデル「AK7709」です。このDSPは、Diracの全ての補正技術を搭載することができ、ドライバーや乗客に高い音質を提供しています。具体的には、音楽のダイナミクスを自動調整する「ダイナミックサウンドコントロール」や、プライベートカラオケ体験が可能なアプリなど、多様な機能を兼ね備えています。
高度なチューニングのメリット
Dirac社の半自動チューニング技術を利用することにより、自動車メーカーは従来数ヶ月を要していた手動のチューニングを大きく短縮できます。これにより、国内外のからのニーズにも即座に応えられる柔軟性が生まれます。また、旭化成チームによる技術サポートも提供され、オーディオDSPの迅速な導入を支援します。
多彩な音響ソリューションの展開
旭化成が提供しているオーディオ・ボイスソリューションは、Diracの技術との組み合わせにより、さらにそのパフォーマンスが向上します。たとえば、エンジンサウンドクリエイターを用いれば、EVでも個性的なエンジンサウンドを体験できるようになります。加えて、アクティブロードノイズキャンセリング技術を通じて、静かな車内環境を維持し、乗客の快適さを確保します。
最後に
こうした音響技術の進化を受けて、旭化成エレクトロニクスのESプロジェクト長、藤田健氏は、「電動化や自動運転の普及により、車の音や移動中の過ごし方はその重要性が増していく」と語ります。彼が指摘するように、今後の自動車における音響体験は、もはや単なる音質の話ではなく、生活の質を左右する重要な要素となるでしょう。Diracとの協業を通じて、旭化成はその進化を先導していく姿勢を見せています。