次世代通信を切り拓くテラヘルツ無線システム
2023年、早稲田大学と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で開発したテラヘルツ帯無線通信システムが、4.4kmで一つの記録的な大容量データ伝送を成功させました。この研究は、次世代移動通信システムの中核となる技術として、その将来性がますます注目されています。
テラヘルツ帯とは何か?
テラヘルツ帯は、周波数おおよそ100GHzから10THzの範囲にある電磁波の領域を指し、従来の通信技術ではなかなか実現できなかった高速通信を可能にします。特に、これまで利用されてきたXバンドやKaバンドでは、帯域幅が限られていたため、通信速度も数百Mbpsから数Gbpsにとどまっていました。しかし、この新しい技術により、テラヘルツ帯を使用することで20Gbps以上の速度を実現することができると期待されており、その研究が進められています。
実証実験の内容
この無線通信システムの実証実験は、東京都小金井市の六階建てのビルの屋上から、東京都西東京市にあるスカイタワー西東京まではるか4.4kmの距離で行われました。使用した周波数帯は95.375GHzから96.625GHzで、送信機の出力は15mWに設定。実験では、変調方式にQPSKと16QAMを採用し、それぞれ伝送速度2Gbpsと4Gbpsを確認しました。
今後の展望
この成果により、テラヘルツ技術がもたらす通信の大容量化により、上空でのネットワーク回線のIEP(インターネットサービスプロバイダー)レベルの高速通信が実現することが期待されています。特に、山間部や離島などのアクセス困難な地域での高解像度映像の伝送や、大規模災害時の通信基地局としての貢献が期待されます。
また、今後は空中線電力1Wの送信機の試作を進めることで、20kmの伝送距離を持つ20Gbpsの通信機能を実現する計画が立てられています。
研究プロジェクトの背景
この研究は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)や科学技術振興機構の助成によって進められており、テラヘルツ技術の実用化に向けた重要な一歩となっています。これからの通信技術の進化に期待が寄せられています。
最後に
テラヘルツ帯に基づく無線通信システムは、我々の生活を根本から変える可能性を秘めた技術です。今後の研究や実用化の進展により、次世代の通信基盤が築かれていくことでしょう。早稲田大学とJAXAの研究チームの今後の成果に目が離せません。