5月12日は看護の日 - 高齢者が地域で安らかに過ごせることの重要性を考える訪問看護の取り組み
2024年1月に開業する「ななーる訪問看護ステーション」は、三重県伊賀市の医療過疎地である大山田地域において、高齢者が住み慣れた地域で最後まで過ごすことを支えるために設立されました。このプロジェクトは、在宅医療の質向上と業務の効率化を目指す企業、株式会社eWeLLによって推進されており、高齢化率が67%に達する地域で「いなかんご」プロジェクトとして取り組んでいます。
日本の高齢化と地域医療の現状
2023年の時点で日本の高齢化率は29.56%という高水準に達しており、世界でも突出した数値を示しています。しかし、地域医療の格差はますます広がっており、多くの地域で“無医地区”として指定されている場所も存在しています。この現状は、高齢者の多くが「最期は自宅で迎えたい」という希望を持っている一方で、地域の医療提供体制が追いついていないことを示しています。
「いなかんご」プロジェクトの誕生
大山田地域では、地域包括ケアを実現するための新たな取り組みとして「いなかんご」プロジェクトが立ち上がりました。このプロジェクトは、医療が不足している地域においても高齢者が安心して自宅で暮らせる環境を整えることを目指しています。開業当初、地元住民との距離があったため、「よそ者」として警戒されることもありましたが、地域出身の看護師を採用し、地元の行事に参加することで信頼関係の構築に努めました。
地域との信頼関係構築
「いなかんご」プロジェクトはただ医療サービスを提供するのではなく、地域住民と共に生活を支え合う関係を築いてきました。健康相談を行う「村の保健室」や「認知症カフェ」を開催し、地域全体の健康を促進する活動にも力を注いでいます。看護師が地域のイベントに参加することで、住民との距離が縮まり、互いに信頼し合う関係が生まれました。
さらに、看護師の無事後、初めての看取り(自宅での最期)を実現したことが大きな自信となり、24時間体制での地域医療を本格化させました。訪問件数が増えるにつれ、スタッフと地域住民の関係も深まり、単なる医療提供者を超えた存在となっています。
ICTを活用した業務効率化
訪問看護の新たなモデルの一環として、ICT(情報通信技術)を活用した遠隔サポート体制も取り入れています。訪問看護スタッフはリモートで受けた支援を活用し、業務を効率的に行うことができる環境が整えられています。この情報の見える化により、住民が抱える不安や悩みを早期に察知することが可能になり、質の高いケアを提供する土台が築かれました。
未来の展望
ななーる訪問看護ステーションの関係者は、最終的には「最期まで大好きな場所や人と暮らし続けられることを当たり前にする」ことを目標に掲げています。このモデルは今後、医療が不足する地域への展開や持続可能な運営体制の構築を目指します。さらに、ICTを活用した効率化や人材育成においても地域へ貢献を続ける方針です。
結論
eWeLLは「いなかんご」プロジェクトの理念に基づいて、地域包括ケアシステムの実現を支援し、全ての人が安心して暮らせる社会の実現を目指します。この取り組みが、他地域にも広がり、多くの高齢者が安心できる環境で生きることにつながることを期待しています。