2030年に向けたEV活用とコスト削減の可能性

EV活用の新たな展望

電気自動車（EV）の普及が進む中、特にスマート充電とビークル・ツー・グリッド（V2G）技術の役割が注目されています。最近発表されたEYの調査によれば、これらの技術を活用することで、家庭での自動車の総コストを平均20%削減することが可能であり、特にファミリーカーを所有する家庭にとっては大きなメリットとなります。

EVの調整力とコスト削減

EYの報告書「Plugging into potential」では、EVを用いた調整力を活かすことで、欧州の送配電業者は年間約40億ユーロのコストを削減できるとしています。2030年までに、EVは欧州の電力供給の約4%を占める可能性があるとのこと。これは3,000万世帯分の電力に相当します。

自動車の電動化が進む中で、送配電網の費用対効果や安定性を確保するためには、EVの充電方法や時間の管理が重要です。最適なタイミングでの充電により、電力を送配電網に供給し、消費者のコストを削減できる仕組みが求められています。

コスト削減の具体例

EYの試算によれば、内燃機関の車両からEVへの転換により、欧州六大市場においては年間で平均して、コンパクトカーで4%、ファミリーカーで9%、SUVで14%のコスト削減が実現可能とされています。特に英国のEV所有者は年間最大19%のコスト削減を見込んでおり、ドイツやスウェーデン、スペインでも14%の削減が提示されています。

ファミリーカーに関しては、フランスで年間15%、ドイツで23%のコスト削減が見込まれており、SUVセグメントでは英国で26%、ドイツで29%の削減が可能です。

スマート充電とV2Gの必要性

電力需要は2030年頃までに倍増する見込みですが、EVからの供給能力を最大限に享受するためには、スマート充電やV2G技術の導入が必須です。これらの技術を活用することで、電力供給のピーク時における柔軟な対応ができ、再生可能エネルギーの利用促進にもつながります。

EYのSerge Colle氏は、「EVは調整力を増加させるためのコスト効果が高いリソースであり、充電時間の最適化が消費者のエネルギーコストを減少させ、送配電網の負担を軽減する」と語っています。

日本におけるEV導入の可能性

日本においても、EVの普及が急務です。EY戦略・コンサルティングの小池雄一氏は、EVがエネルギーインフラの一部として活用されることが重要であると指摘しています。特に、日本は電力会社が基本単位であるため、系統調整の余力が欧州に比べて脆弱であることが課題です。このため、EVの調整力を活用し、系統投資負担を軽減する施策を進めるべきだと述べています。

まとめ

スマート充電とV2G技術を取り入れることは、ただの選択肢ではなく、必須の要素です。これにより、EVは地域ごとの電力需要に対して柔軟に対応できる素晴らしいソリューションとなり、送配電網への投資コストを抑える可能性を秘めています。未来のエネルギーシステムにおいて、EVの調整力の重要性が一層高まることは間違いないでしょう。