新インスリン投与量判定システムの特許取得
富山県のキュアコード株式会社が、国立大学法人富山大学との共同で開発した「1型糖尿病患者向けインスリン投与量判定システム」が特許を取得しました。この技術は、患者の食前血糖値や食事中の炭水化物量に応じて、最適なインスリン投与量を算出し、患者のQOL(生活の質)の向上を目指しています。
1型糖尿病とは
1型糖尿病は、膵臓のβ細胞が自己免疫により破壊され、インスリンの分泌ができなくなる疾患です。国内には推定で10万人から14万人の患者がいると言われており、彼らは生涯にわたりインスリン注射を必要とします。従来、患者は血糖値を安定させるために食事内容を制限し、インスリン投与に関して医師の指示を待つ必要がありましたが、これは現実的には負担が大きく、QOLを低下させる要因となっていました。
特許技術の特長
新たに取得した特許技術の主なポイントは以下の通りです。
1. 個別化されたインスリン計算
患者ごとに設定されたカーボ/インスリン比やインスリン効果値を基に、目標血糖値の範囲内に収まるようにインスリン投与量を算出します。
2. AIによる炭水化物量の推定
食事の写真から炭水化物量を自動解析する技術と連携し、患者の手入力の負担を軽減する仕組みを取り入れています。
3. 機械学習による精度向上
多くの糖尿病患者から収集されたデータをもとにした機械学習により、将来的にはさらに正確なインスリン投与量の計算が可能になることを目指しています。
4. スマートフォンアプリの実装
このシステムはスマートフォンアプリとして実装され、日常生活で手軽に利用できることを目指しています。
期待される効果
本システムの実用化により、患者は自由な食事選択をしつつ、適切な血糖コントロールが実現できるでしょう。国立国際医療福祉大学の中條大輔教授は、「この技術革新は1型糖尿病患者の生活の質を大きく向上させる」とコメントし、特にAIによる自動炭水化物量解析機能が生活の負担を大幅に軽減する期待を寄せています。
キュアコード株式会社の土田史高代表は、「この特許取得は、患者の生活改善に向けた大きな一歩であり、個別化された医療支援が可能になる技術です」と述べ、将来的には医療機器プログラムとしての開発も視野に入れていることを強調しています。
研究の進行状況
現在、1型糖尿病患者を対象とした食事画像認識機能を搭載したカーボカウントアプリの開発が進められています。このアプリは、患者ごとに個別設定されたカーボカウント指標を基に、最適なインスリン投与量を算出・検証するもので、臨床試験も行われています。アプリを使用する患者としない患者の比較研究が進行中で、効果の実証に向けた取り組みが続けられています。
キュアコード株式会社について
キュアコード株式会社は、2011年に設立されたヘルステック分野のITベンチャー企業で、医療・介護および健康関連のアプリやシステムの研究開発を手がけています。今後も、アカデミアとの連携を深め、医療技術の発展と患者のQOL向上に向けた取り組みを続けていくことが期待されます。