フィルム写真が捉える、光と影の記憶を感じる特別な体験

現代のデジタル社会において、アナログなフィルム写真が持つ独自の魅力が再評価されています。特に、東條會館の「フィルムの記憶」は、その特別な体験を提供する存在です。6月1日、写真の日に合わせて販売が開始されます。この作品は、モノクロネガフィルムと写真プリントがひとつになったもので、ただの記録ではなく、受け継がれるべき「記憶」を形にしたものです。

1. フィルムの記憶とは？

「フィルムの記憶」は、現在では入手が非常に難しくなった4 inch × 5 inchのサイズのモノクロフィルムを用いて大判カメラで撮影します。この撮影体験は、古い映画に登場するようなカメラを用いて、一枚ずつフィルムを装填し、ガラス面で映る像を確認するところから始まります。撮影された写真は、専門の写真師が自社の暗室で現像、修整、焼き付けを行い、唯一無二の作品として仕上げられます。

2. フィルム写真の価値

デジタル写真に慣れ親しんだ私たちにとって、フィルム写真は新たな体験を提供します。フィルムで撮影する行為は、記録すること以上の価値があります。撮影してから完成までの各工程に時間を要し、その過程で得られる待つことの喜びやじっくりとした鑑賞の価値が生まれるのです。特に、瞬時にイメージが消費される現代だからこそ、シャッターを切る重みや集中力は、写真一枚に深い意味を宿らせます。

また、フィルムはデジタルデータとは異なり、曖昧で複雑な揺らぎを記録します。モノクロームの美しさを際立たせるために、粒子の奥行きや光の濃淡が持つ独自の質感が、見る者の想像力を刺激します。撮影後には現像されたネガフィルムに手作業の痕跡が残り、その営みは静かに写真という工芸の深みを語ります。