はじめに
近年、働き方の柔軟化や価値観の多様化が進み、都市住民の生活スタイルも変わっています。その中でも多拠点生活への関心が高まっており、国土交通省による調査では約3割の都市住民が二地域居住に興味を示していることがわかりました。このような潮流の中で、日鉄興和不動産株式会社、株式会社SANU、株式会社JDSCの3社は、都市と自然を行き来するライフスタイルが心身の健康や幸福感(ウェルビーイング)にどのように影響を与えるかを科学的に検証する共同研究を開始しました。
研究の背景
この研究は、単なる二地域居住の実践にとどまらず、社会全体における生活様式の変化を見つめる必要があると考えられています。特に、どのように多拠点生活が心理的・生理的に影響を与えるのかを解明することが重要です。多拠点生活についての研究はまだ発展途上であり、この共同研究は、「住まい × 生活フィールド × AI・データ分析」という三つの角度からアプローチし、多拠点生活の新しい知見を創出しようとしています。
初期分析の結果
本研究の初期分析では、SANU 2nd Home会員196名と非会員218名に対して、ウェルビーイングに関連する意識や心身の状態についてのオンラインアンケートを実施しました。サンプル結果から以下の主な示唆が得られました。
1. 高まるウェルビーイングへの期待
本調査から、SANU 2nd Home会員は、自宅外での宿泊について、非会員に比べてウェルビーイングに関する期待が高く、特に「深いリラックス」「対人関係」「趣味・余暇の充実感」など多くの要素で高い数値を示しました。このことは、自らの生活に対する期待感や、心のゆとりを求める傾向が顕著であることを示しています。
2. 自宅と宿泊先でのウェルビーイングの違い
SANU 2nd Home会員は、自宅よりも宿泊先での充足感が高い傾向がありました。「深いリラックス」「自然体感」「自由感」「集中力」の面で、宿泊先では大きな充足感を感じていることが明らかになりました。一方で、自宅での充足感に関しては、非会員の方が充足感を得ている場合が多く見られました。しかし、仕事や学習に関しては、会員の方が充足度が高いことがわかりました。
この研究が提供する価値
本調査の結果は、多拠点生活がもたらすウェルビーイングへの期待を理解する上で非常に重要です。多拠点生活は、心身の健康に寄与する可能性がある反面、それを支えるための環境や条件を明確にする必要があります。研究の進行に伴い、様々なデータを用いてさらに詳細な分析を行い、今後は実践的な提言を行うことを目指します。
研究の今後の展望
本研究は今後、さらなるフェーズに進み、対象者の生体指標や環境要因を組み合わせた分析を進める予定です。そして、どのような条件がウェルビーイングを向上させるかを具体的に探求していきます。この研究は2026年5月には学会で発表される予定で、得られた知見は住宅や都市開発、多拠点型居住サービスの進化、社会課題解決に向けた新たなスタンダードの創出に繋がることが期待されています。
結論
この研究は、私たちがこれからの時代においてどのように生活し、心身の健康を保持していくかのヒントを提供するものです。多様な価値観を持つ現代社会において、多拠点生活が心地よいウェルビーイングの実現に寄与する可能性を持った新しいライフスタイルであることが期待されます。