物語の始まり
早朝、静寂の工房に透き通った光が差し込み、パンの香りが広がります。この場所で今日も「ゆめちからもちもち生食パン」を焼き始めるのが私たちの日常です。生食パンブームが一段落する中でも、私たちは流行に流されず、こだわり抜いたパンを焼き続けています。
このパンには、私たちの誇りと挑戦が詰まっており、特別な存在でありたいと願っています。
きっかけは小麦の出会い
物語は、北海道・十勝の一社員の実家から送られてきた「ゆめちから」という小麦粉から始まりました。 「これでパンを作ってみたらどうだろう?」そんな軽い気持ちが、全てを変えるきっかけになりました。焼きあがったその瞬間の驚き、「何だ、このもちもち感!?」が、チーム全員を引きつけ、パン作りへの情熱を与えました。
しかし、普通の作り方では思い描いたような生地にはなりませんでした。強力粉の特性に悪戦苦闘し、しっとり・もちもちの両立は至難の技でしたが、小麦の特長を最大限に引き出すことが私たちの目標でした。
湯種製法への挑戦
何度も試作を繰り返し、3シーズンを経た時、私たちは「湯種製法」という新たな手法に辿り着きました。この製法は小麦粉に熱湯を加え、一晩寝かせるため、手間がかかりますが、弾力と風味を引き出すための最良の方法でした。
朝、焼き立てパンを見て、チーム全員で顔を合わせる瞬間が大好きです。「うまく焼けた?」という声が交わされ、焼き立ての香りが工房に広がります。
こだわりの素材選び
「ゆめちからもちもち生食パン」はその瞬間からずっしりとした重みを感じます。一口噛むと、特別なもちもち感と弾力が広がる、新しい食体験そのものです。市販の軽やかなパンとは一線を画しています。
その秘密は、まず水分量にあります。市販のパンは高い水分を持つことが多い中、私たちのパンは控えめな水分で、密度の高い生地を作ることに挑戦しています。さらに「ゆめちから小麦」と発酵バターを贅沢に使い、豊かな風味を生み出します。
天然酵母の活用も忘れません。小麦本来の甘みと香りを引き立て、ちぎった瞬間に穀物の香りが漂います。そして湯種製法が、特製の弾力としっとり感を生む決め手となります。
“ちょうどいい贅沢”の追求
私たちのビジョンは「パン以上、ケーキ未満」です。それは特別でありながら、日常の食卓に寄り添う存在を目指しており、パッケージにもその思いが込められています。朝の食卓や軽食に、あたたかく寄り添う存在でありたいのです。
薄く切ってトーストすれば、香ばしさが際立ち、厚切りに具材をのせれば、素材の美味しさが一層感じられます。このパンは日常の素朴なお楽しみを与えてくれる、贅沢な存在です。
グランプリ受賞の瞬間
2025年、ジャパンフードセレクションでグランプリを受賞した際に最初に思い浮かんだのは、その時々の努力や苦労でした。審査員の評価には、「日常を非日常に変えてくれる、まさにプレミアムなパン」とあります。その評価に対する嬉しさと同時に、心からの笑顔が広がった瞬間が私たちの誇りとなりました。
これからも続ける物語
グランプリ受賞は新たなスタートです。「パンのある食卓に、ちょっとだけ笑顔と物語を届けたい」との願いを胸に、今日も工房は小麦と酵母の香りに包まれています。流行遅れと言われようとも、私たちは本当に美味しい生食パンを焼き続けたいと思っています。
皆さまの日常に「ゆめちからもちもち生食パン」で、小さな非日常を届けられるように、今日も笑顔でパンを焼き上げます。