新型極低温熱発振器の開発
東京都立大学大学院理学研究科物理学専攻の水口佳一教授と特任研究員Poonam Rani氏は、超伝導体を活用して高性能な極低温熱発振器を開発しました。この装置は、数ケルビンの極低温で交流熱を発生させることができ、宇宙観測に使われるセンサーの温度校正や、精密な物性測定に新たな使途が期待されています。
研究の背景と目的
近年、将来的な科学研究において、極低温環境下での性能を向上させるための装置の需要が高まっています。従来の熱発振器は、ヒーターのON/OFFによる熱発生方式を採用し、平均温度の安定化や高周波数での発振、波形制御は難しい課題とされていました。本研究チームは、それらの課題を解決する新しい原理に基づいた熱発振器の開発を目指しました。
開発プロセス
研究者たちはまず、高純度の鉛(Pb)と銅(Cu)の線を取り、これをハンダで接合することで熱発振器の基材を作成しました。具体的には、Pbの超伝導転移温度(約7.2 K)以下の温度域で、超伝導と常伝導の転移を利用し、熱伝導率に急激な変化をもたらす振動磁場によって熱発振を実現しました。これにより、従来の熱発振器に比べて平均温度を安定させながら、精度の高い熱発振が可能となりました。
実験結果と期待される応用
研究チームが実施した実験では、複数の熱振動発生条件が検証され、理論通りに熱振動が観測されました。特に、Pb線の熱伝導率が均一に振動することに成功し、Cu線では熱振動が九分均一に発生することが証明されています。この均一性は、未来の研究や技術開発において大きな利点となるでしょう。特に、TES(Transition Edge Sensor)などの極低温センサーの温度校正や、低温における物性測定の精密化に寄与することが期待されています。
本研究の意義と未来への展望
本研究では、新しい熱発振器を開発したことによって、超伝導転移の特徴を活用した新たな原理での動作が可能となりました。この技術は、今後の研究においても同様の熱発振器の製造に利用される可能性が高いと考えられています。さらなる上限周波数の検証が進むことで、様々な応用が広がることでしょう。今後の開発に期待がかかります。
この情報は、2023年5月にMaterials Today Advancesに掲載された研究成果をもとにしています。