FRPの循環利用を実現した天龍コンポジットの挑戦と未来への展望
岐阜県加茂郡に本社を置く天龍コンポジット株式会社は、繊維強化プラスチック(FRP)の製造・販売を行う企業です。近年、FRP市場の拡大に伴い、廃棄物の処理が大きな課題となっています。特に、FRPは特性上再利用が難しく、これまで多くが埋立処分されるという状況が続いていました。しかし、この常識を打破するべく、天龍コンポジットは革新的な取り組みを行っています。
新しい技術「電炉CCS法」による再資源化
腑に落ちないのは、再生困難とされてきたFRP端材のリサイクルです。天龍コンポジットは、ケミカルリサイクル技術「電炉CCS法」を駆使し、製造過程で発生するFRPの端材を新たな資源として活用します。この方法では、FRPを炭素固定材として評価し、製鋼工程に再利用。このようにして生まれる加炭材は、従来用いられていた石油由来のコークスの代わりに使用され、CO₂の排出削減にも貢献しています。
FRP業界の環境課題と向き合う
FRPはその軽量性や高強度、耐腐食性から、多様な分野で需要が急増しています。しかし、熱硬化樹脂を使用しているため、従来の方法では再利用が難しいのです。その結果、多くが埋立に回されてしまっています。これには埋立地の逼迫や処分費用の上昇、さらには環境への影響が懸念されることから、業界全体でFRP廃棄物の再資源化が求められてきました。
実績と成果
天龍コンポジットは、2025年2月からのプロジェクト開始から4か月で、FRPパイプ製造時に発生する1トン以上の端材を回収しました。この成果は、従来の埋立処理に依存せず、資源循環を実現したことを意味します。これにより、廃棄物の減少と共に、環境への負担軽減も進んでいます。
「これまで、FRPの産業廃棄物は埋立処分しか選択肢がないと思い込んでいましたが、今回の取り組みが新しい道を切り開きました。今後も持続可能な未来に向けて、様々なリサイクル手法を探求していきます」と、天龍コンポジット製造部の担当者は語ります。
今後の展望と普及への努力
天龍コンポジットはこれまで、廃液や廃溶剤という他の産業廃棄物のリサイクルにも取り組んできました。今後は再資源化技術のさらなる普及を進め、FRP業界全体での循環社会の構築を目指します。また、2025年10月には一般社団法人強化プラスチック協会が主催する「70th FRP CON-EX2025」に参加し、今回の取り組みと環境への貢献について、株式会社サティスファクトリーとの共同展示で広く紹介する予定です。
企業情報
天龍コンポジット株式会社
所在地:岐阜県加茂郡川辺町中川辺1430番地1
代表者:代表取締役社長 後藤 𠮷孝
事業内容:FRP等の複合材製品の製造販売
株式会社サティスファクトリー
所在地:東京都中央区八丁堀3-12-8 HF八丁堀ビルディング6F
代表者:代表取締役 小松 武司
事業内容:廃棄物マネジメント事業、環境コンサルティング事業、再資源化プロダクト事業