新技術で水を安全に
2025-12-23 17:52:25
電力不要で実現する安全な飲料水の未来に向けた研究成果
電力不要で実現する安全な飲料水の未来
信州大学、Community Jameel(コミュニティ・ジャミール)およびジャミール商事が共同で開発した新たな浄水技術が、農村地域での安全な飲料水へのアクセスを実現する可能性を示しました。この技術は、電力インフラが不十分な地域において特に効果的で、環境への負担を軽減する手法です。2025年12月22日、長野県長野市の信州大学キャンパスで行われた記者会見において、国際学術誌「Results in Engineering」に掲載された試験結果が発表されました。
世界の水問題
現在、世界では約20億人が安心して飲める水にアクセスできず、その影響は健康や教育、生活の質にまで広がります。農村地域では水質汚染や不安定な電力供給が問題で、高度な浄水システムの導入が困難な状況が続いています。これに対処すべく、信州大学の遠藤守信特別栄誉教授は、超低圧で動作できる浄水膜、いわゆるRO膜を開発しました。
新技術の特長
本RO膜は、NSF/ANSI 58認証を取得しており、従来のROシステムの半分以下の圧力で運転可能です。これにより、電力の供給がない環境でも、手動ポンプを使って簡単に水を浄化することができます。研究チームはインドの西ベンガル州およびラジャスタン州で6か月間にわたって実証試験を行い、この新技術の有効性を確認しました。
試験の結果、多くの市販のRO膜と比較して、浄水性能が約2倍であることが明らかになりました。また、手動操作に必要なエネルギーは約50%減少し、電力やバッテリー、太陽光などに一切依存せずに機能することができると報告されています。
住民の声
実証試験に参加した住民からは、井戸水が不安全と認識されていた地域において、水の味や見た目が改善されたとのフィードバックが多数寄せられました。健康面でも改善が報告され、コミュニティでの実生活に根ざした評価が本技術の信頼性を証明しています。
開発の背景
このプロジェクトは、Community Jameelやジャミール商事の支援のもと、インドの非政府組織であるSeva MandirおよびRupantaran Foundationと協力して実施されました。Community Jameelの創設者であるモハメド・アブドゥル・ラティフ・ジャミール KBEは、信州大学との連携を読み取る形で本研究を支援しています。
彼は「安全な水へのアクセスは、世界中の人々が直面する最も緊急的な課題の一つです。このプログラムを通じて、信州大学の研究チームを支援できたことを非常に嬉しく思っています。」とコメントしています。
今後の展望
研究チームは、今回のRO膜技術の商業化を具体化し、特定の地域社会に合わせた形で展開していくことを考えています。農村世帯だけでなく、災害時の緊急浄水やインフラに依存しない持続可能な水供給システムとしての応用も期待されています。
本研究論文はすでにResults in Engineering誌に掲載されており、さらにこの革新的な技術によって、今後数多くの人々が安全な飲料水を手にする日が来ることが期待されています。