日本の外食産業とくら寿司の取り組み
日本の外食産業は今、かつてないほどの人手不足に直面しています。特に、2010年代に団塊世代が退職し始め、若年労働力の減少により、飲食関連職の求人倍率が他の職種を大幅に上回る状況となりました。このような中、くら寿司が注目したのは「従業員体験」(EX)の向上です。人手不足の解決には、働きたいと思える環境の整備が不可欠であり、企業は様々な工夫を凝らしています。
様々な研修を通じたEXの向上
くら寿司では、研修を通じて従業員満足度を高める施策を積極的に実施しています。例えば、実際に農業や漁業の現場を体験できる研修を設け、従業員が食材の生産過程に触れることで、自社の存在意義を再認識する機会を提供しています。また、接客や調理技術の向上を目指した「KURA-No. 1 グランプリ」という社内コンテストも開催され、参加者が新たなスキルやチームワークを学ぶ場となっています。
EX向上の具体的な事例
くら寿司の取り組みは様々ですが、特にユニークなのは「KURA-No. 1 GRAND PRIX」というコンテストです。このコンテストには、各店舗の最優秀スタッフが集まり、お持ち帰りやデザート作りなどで腕を競い合います。競争心を駆り立てることでモチベーションを高め、仲間との結束力を育む重要な場となっています。
さらに、採用活動においても「ジョブ型採用」を取り入れ、求職者が自分のスキルと経験を活かせる環境を重視するようになっています。このような流れは新卒採用のみならず、幅広い人材確保の手法として浸透しています。
教育担当者の視点
くら寿司の教育担当者は、自社の取り組みがどのように離職率の低下につながっているのかを語ります。「新入社員の9割がアルバイト経験者であり、即戦力となるだけでなく、既に社風や業務を理解しているため定着率が高いという点が強みです。」と言います。このような取り組みを通じて、従業員が「ここで働きたい」と思える環境を作り出しています。
大自然の中での研修
さらに、くら寿司では大自然を利用した研修も実施されています。毎年恒例の田植え体験や漁業研修は、従業員たちが地元の生産者との交流を深め、食文化や生産の背景を学ぶ良い機会です。自然を感じることで、従業員は責任感を持ち、企業の理念に共感しやすくなります。
世界大会へ向けた期待
そして、2025年には「KURA-No. 1 GRAND PRIX」が世界大会として開催される予定です。アメリカや台湾からも参加者を招くことで、世界規模での技術交流や新たな発見が期待されています。これは、くら寿司の従業員がグローバルな視点を持つうえでの貴重な機会となります。
結論
日本の外食産業が直面する人手不足という課題に対して、くら寿司は独自のの研修施策を通じて、新たな人材育成のモデルを作り出しています。体験型研修を通じて、従業員は自己成長を実感しるとともに、企業理念への共感を深めています。このような取り組みが、今後の人材確保や業界全体の活性化につながることを願っています。