中村志野展 - 木に宿るひそやかなかたち -
この度、東京・北青山のギャラリー「ESCAPERS AN OTHER WORLD」にて中村志野の個展が開催されます。「木に宿るひそやかなかたち」と題された本展では、木の持つ独特の存在感とその素材が放つ温もりを感じることができる作品が揃います。
中村志野は、青森県出身の彫刻家であり、金沢美術工芸大学で彫刻を学び、後に東京藝術大学大学院で仏像の保存修復に従事しました。現在は石川県の山中温泉で制作を行っていますが、その作品には木、漆、顔料などのさまざまな素材が使用され、日常の生活に寄り添った器や蓋物を中心に展開されています。
本展では、木の年輪や彫り跡、漆の表面処理が織りなす、美しい静寂に包まれた作品が紹介されます。中でも注目したいのは、動植物をモチーフにした小さな作品たちです。これらは日々の生活に寄り添いながら、私たちに時間や記憶を静かに語りかけてきます。掌に収まるほどの小さな世界には、やさしい光とぬくもりが宿っており、中村志野の作品に触れることで、その静かな息吹を体感できることでしょう。
展覧会に出展される主な作品をいくつか紹介します。まず、一つ目は「鳥皿」です。この作品は、ウイグルの仏教美術からインスパイアを受けたもので、愛らしい鳥の姿を彫りながら、その空想に想いを馳せることができます。
次に「牡丹蓋物(赤松)」も見逃せません。牡丹の形を模したこの作品は、赤松の美しい冬目を活かした精細な彫刻で作られています。冬に育つ茶色い年輪の部分が強調され、その美しさが際立ちます。
また、「列弁菱皿」は、日本の古典彫刻に見られる「列弁」と呼ばれる装飾が施されています。仏さまの冠などを飾る可憐な花々が、華やかに盛り込まれた角皿です。さらに、「四方縁花丸盆」は、日本の仏教美術にインスパイアされた花模様が描かれ、仏像に用いられる意匠が見受けられます。
最後には「獅子・狛犬」が展示されます。この作品は、かつて日本に存在しなかったライオンを彫刻家が想像し、強さと滑稽さを兼ね備えた形で表現しています。
展覧会は2025年11月21日から11月30日までの期間に開催され、休廊日は11月26日と27日です。作家である中村志野は11月22日(土)に在廊する予定ですので、ぜひ直接その作品に触れ合ってみてください。
ギャラリー「ESCAPERS AN OTHER WORLD」は、美しい工芸作品をタイムレスな視点で提供しており、訪れることで新しい感覚が生まれる特別な空間として知られています。興味がある方は、ぜひこの機会に足を運び、中村志野の小さな命が息づく作品たちを観賞し、日常の中に新たな気づきを得てみてはいかがでしょうか。
個展詳細
- - 会期:2025年11月21日(金)〜11月30日(日)12:00-18:00(休廊日:11月26日(水)、27日(木))
- - 作家在廊日:11月22日(土)
- - 場所:ESCAPERS AN OTHER WORLD 〒107-0061 東京都港区北青山3-7-10 D2 Place 1F
- - TEL:080-7508-9967
- - Instagram:@escapers_another_world