齋藤帆奈の個展「Co-consuming / Mutual Traces」が歌舞伎町で開催

齋藤帆奈の個展「Co-consuming / Mutual Traces」

2025年5月28日（水）から新宿・歌舞伎町に位置するアートスペース「デカメロン」において、現代美術作家の齋藤帆奈による個展「Co-consuming / Mutual Traces」が開催されます。本展では、特に真性粘菌とのコラボレーションによって生み出された新作《Mutual Traces》が初公開されることが注目されています。

齋藤帆奈は、東洋大学にて助教を務めながら、東京大学大学院博士課程にも所属する現代美術作家です。彼女のアートは、真性粘菌に色素や顔料を与えるという独自の手法によって生み出される作品で、美術界において高い評価を受けています。齋藤の代表作《Eaten Colors》や新作《Mutual Traces》の展示が、どのように彼女のアートの輪郭を形成しているのかを探索する絶好の機会となります。

新作《Mutual Traces》の魅力

《Mutual Traces》は、彼女自身の身体と真性粘菌の共同作業によって形成される作品です。具体的には、オートミールとグリッターを混ぜたものを齋藤の身体に塗り、そのまま布に転写することで、齋藤自身と真性粘菌との痕跡が共存する様子を表現しています。この作品は、単なるアートの呈示にとどまらず、真性粘菌と齋藤の身体、さらには鑑賞者や周囲の環境との相互作用を通じて、リアルタイムで変化していく進化的なハプニングの側面を持っています。

グリッターは、一見すると文化的な装飾や化粧として捉えられますが、真性粘菌の代謝過程を通じて自然界の鉱物や金属に還元されます。遠目には人間の身体の一部として認識されますが、近視では人工と自然、そして生命の痕跡が交錯する視覚的な効果を生み出します。このような表現は、齋藤自身が望む「自然と文化の二項対立をより流動的に捉える」ことを体現しています。

魅力的な展示形式

本展の特徴の一つは、一部の作品において真性粘菌が生きたまま活動を続ける点です。会期の初めには、真性粘菌が活動する様子がまるで培養工場のように展示されることが期待されます。中盤には、齋藤がその培地をアート作品として掛ける作業が始まり、展示の中で経済活動も含まれる点は、従来のアートの枠を超えた新しい視点を提供します。

齋藤は、真性粘菌を用いるアートが「搾取」や「暴力」と見なされる可能性を認識しつつ、同時に真性粘菌を養わなければならないというダイナミズムについて考えます。この展覧会は、単なるアートの展示にとどまらず、人間と自然との関係性を再検討する場となります。

デカメロン：アートと文化の交差点

企画展が行われる「デカメロン」は、歌舞伎町のアートヒップな施設で、ギャルやクィアな文化が息づくバーを併設しています。このバースペースは、来場者同士の交流やケアが行われる場でもあり、展覧会のテーマ「共消費」と深い関わりを持つ場所です。齋藤の作品は、彼女自身の肌の常在菌までもアートに持ち込むことで、作品の中で新たなコントラストを生みます。

本展は、私たちが日々過ごす自然と文化の間にある多様な関係性を問い直すことを促します。この独創的な展覧会に是非とも足を運んで、齋藤帆奈の魅力的なアートの世界を体験してください。