TICAD9で考えるカカオの新たな可能性
2025年8月20日から22日の間、横浜のパシフィコで開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD9)で、カカオの持続可能な生産に向けた新たな取り組みが注目を浴びました。明治、ヘミセルロース、ゼブラの3社が共同開発したカカオバイオプラスチック製の「サラサクリップ」ボールペンは、環境に配慮した素材として会議の記念品に選ばれ、アフリカの要人たちに配布されました。
新素材の魅力
カカオバイオプラスチックとは、カカオの未活用部位を利用した新しい素材です。カカオ農作物の生産過程で発生する種皮をアップサイクルし、美容成分としても注目される「カカオセラミド」と共に、この素材は持続可能な資源利用の一環として重要です。カカオ全体の約70%はチョコレートとして使用されず残っており、未活用の部分に価値を見出すことで新たなビジネスチャンスが創出されることを目指しています。
TICADとは
TICAD(Tokyo International Conference on African Development)は、アフリカ開発をテーマとした国際会議で、日本政府が主導しています。今年は第9回目となり、各国の首脳や関係者が集まり、アフリカの課題解決に向けたビジネスの可能性を模索しました。その中で明治が発表した事例は特に注目され、持続可能な開発目標(SDGs)に沿った新しい資源の利用法が探求されています。
明治の取り組み
明治は今まで20年以上にわたり、カカオサポートプログラムを展開し、アフリカ地域の農家と協力してきました。ガーナでは、同社の社員が名誉酋長に任命されるなど、地域に根ざした貢献が評価されています。今後は、カカオ生産だけでなく、未活用部位のアップサイクル技術の現地ビジネス化にも力を入れ、持続可能な社会の実現を目指しています。
ボールペン「サラサクリップ」の開発
この「サラサクリップ」は、カカオの種皮を利用したバイオプラスチック素材で作られています。開発には高度な技術と試行錯誤が必要で、2年をかけて完成にこぎつけました。環境に優しい素材であるだけでなく、カカオ特有の香りも楽しむことができ、実用性とデザイン性を兼ね備えています。TICAD9の記念品として配布されたことが、その環境価値を象徴する形となりました。
展示内容
会議では、カカオバイオプラスチックを使用した食品トレーやTシャツ、さらにカカオセラミドを含むチョコレートが展示され、多くの参加者の関心を集めました。「カカオはチョコレートだけではない」とのテーマの下、カカオの新しい可能性を探求する新技術や製品が紹介され、会場は活気に溢れていました。
持続可能な未来に向けて
このように、明治の取り組みは持続可能なカカオ生産の実現に向けて大きな一歩を踏み出しました。カカオバイオプラスチックとカカオセラミドは、今後の製品展開においても新たな可能性を秘めています。これからもアフリカの現地農家と協力しながら、環境負荷の低減を目指していく姿勢が期待されます。日本企業である明治がこの動きをリードすることで、アフリカと日本、さらには全世界に良い影響を与えることでしょう。
おわりに
TICAD9での発表は、単なる会議の一環ではなく、未来に向けた持続可能な開発の具現化といえるでしょう。イノベーションを通じて新たなビジネスの潮流が芽生え、環境問題への関心が一層高まることが期待されます。今後のカカオ産業におけるさらなる進展に目が離せません。