小児・AYA世代の骨肉腫患者における新たな治療指針
2025年3月26日に医学雑誌「Journal of Clinical Oncology」に掲載された研究が、小児およびAYA(Adolescent and Young Adult)世代の高悪性度骨肉腫患者に対する治療法の新たな指針を示しました。この研究は、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)によるもので、全国の34の医療機関が協力して行われたランダム化比較試験の結果です。
研究背景と目的
高悪性度骨肉腫は特に小児や青年に多く見られる稀ながんであり、従来は術前に行う化学療法(MAP療法:メトトレキサート、ドキソルビシン、シスプラチンの3剤併用)が標準治療として確立されていました。しかし、一部の患者では術前のMAP療法の効果が不十分であることがあり、こうした場合には追加でイホスファミド(IF)を用いた4剤併用治療(MAPIF療法)が選択されることが一般的でした。
しかし、MAPIF療法によるIFの追加の効果は必ずしも明らかではなく、副作用が増加する懸念もありました。これに対し、JCOGは術前MAP療法が不十分であった患者に対して、術後の治療法を検証するための試験を実施しました。
研究の方法と結果
JCOG0905と名付けられたこの試験では、小児・AYA世代の転移のない高悪性度骨肉腫の患者が対象となり、術前化学療法が不十分な場合に術後にMAP療法とMAPIF療法を比較しました。結果として、術後のMAP療法へのIF追加の上乗せ効果は認められなかったことが明らかになり、かえって副作用が強くなることが示唆される結果となりました。
これにより、術前MAP療法の効果が乏しい患者であっても、術後はMAP療法を継続することが推奨されることになりました。この研究の成果は、小児・AYA世代の骨肉腫の治療において、標準治療の重要さを再確認させるものであり、世界的にも高く評価されています。
まとめ
本研究による新たな知見は、特に小児や若年層の骨肉腫患者に対する治療戦略に重要な影響を与えると考えられています。今後もJCOGは、更なる臨床試験を通じて、がん患者にとっての最適な医療の確立に向けて取り組んでいく予定です。さらなる進展が期待されるこの領域に、注目が集まります。