障害者雇用支援の新たな一歩:SCUELが可視化データを提供
障害福祉サービスの質向上を目的に、ミーカンパニー株式会社が「SCUEL」と名付けた新たなデータ基盤を発表しました。これにより、就労支援サービスの実績を数値化し、より詳細な地域別や法人別の評価が可能となります。今年度から提供が開始されるこのデータセットは、障害者を対象とした就労支援の現場に新たな光を与えるものです。
新しいデータセットの概要
提供されるデータセットは大きく分けて二つあります。一つめは「定着者数・移行率データセット」で、障害者が一般就労を果たした後の定着状況を示します。二つめは「就労系報酬データセット」で、これは障害者が就労支援を受ける際の賃金の水準を示しています。これらのデータを通じて、就労移行支援、就労継続支援A型、B型といった各サービスの特性や成果を把握できるようになります。
現状の課題
障害者の就労者数は増加しているものの、一般就労を果たした後の離職率も問題視されています。多くの人が6か月から1年の間に職を辞めてしまうという現実があり、この背景には経済的な課題が潜んでいます。特にB型事業所の平均工賃が月17,000円前後と低く、経済的自立には程遠い現状です。
また、同じ支援制度でも地域や法人によって成果に大きな差があることも課題です。これまで、統一的なデータがなかったため、具体的な比較や検証が困難でした。SCUELは、こうしたデータのギャップを埋めることを目指しています。
データから得られる知見
SCUELのデータセットは、支援種類別に様々な傾向を示します。例えば、就労継続支援A型の定着率は半年後が41%であったものの、2年後には23%に低下します。また、地域によっても定着率の差が見られ、例えば北海道や九州では20%未満という厳しい現実があります。
B型事業所では、2年後の定着率が10%未満の地域が多い一方で、四国では1年後から2年後にかけての定着率の低下が顕著です。このことは地域ごとの支援の質や制度設計が影響していることを示しています。就労移行支援については、関東・近畿・中部が安定しており、定着率は2年後でも50%を超えるとされています。特に、就労定着支援では九州・沖縄が80%を超える高い定着率を誇ります。
データの活用方法とインパクト
SCUELのデータは、ただの数値に留まらず、さまざまな課題の解決に役立つものです。例えば、就労支援法人はこのデータを利用して、拠点ごとの成果を比較し、質の向上を図ることができます。自治体や行政においては、地域間の格差を是正し、より良い助成制度や報酬設計への活用が期待できます。さらに、政策立案や研究機関においても、定着率や報酬水準から制度を評価し、改革を促すための重要なデータとなり得ます。
無料レポートとデータ提供の詳細
SCUELは、定着カーブや移行率の傾向を視覚化した「無料レポート」を提供しています。これにより、研究の参考資料としても活用できます。データの提供形式はCSVであり、法人ごとの特定分析にも対応しています。価格については、データ量や対象地域により個別に見積もりがなされるとのことです。
障害者雇用支援の質を高めるための新たな基盤であるSCUEL。このデータを活用し、より多くの障害者が安定した就労を実現できる社会を一緒に築いていきましょう。