アバターのリスク選択
2025-04-23 03:24:21

アバターの表情がもたらすリスク選択の影響とは

アバターの表情がもたらすリスク選択の影響とは



国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の研究グループが行った実験が、アバターを介した対人コミュニケーションがどのようにヒトのリスク選択に影響を与えるのかを明らかにしました。今回の研究は、アバターによる顔表情の変化が、どのように意志決定に作用するかを探るもので、結果として、アバターを介したコミュニケーションがリスクテイキングを促進することが分かりました。

研究の背景



我々の生活において、オンライン会議や仮想ショッピングなど、アバターを使ったコミュニケーションが急速に広がっています。このような環境で、相手の顔がアバターで表示された場合に、私たちの行動はどのように変化するのでしょうか。これまでの研究では、相手の表情がアバターで表示されることによる行動変化は不明瞭でしたが、今回の研究成果によりそのメカニズムに一歩近づいたと言えます。

研究方法



研究チームは参加者を募り、リスク判断を試すためにfMRI実験を実施しました。参加者は、二つの選択肢から自分が好む方を選ぶことでリスクを取る場面が提供されました。一つは「確実な選択肢」で少額の獲得が保証され、もう一つは「不確実な選択肢」で高額を得る可能性があります。

さらに、参加者は課題の開始前に同性の観察者と面談し、その観察者がアバターか実際の顔であった場合の表情反応を観察しました。表情は成功時には堅実な賞賛の顔、失敗時には軽蔑の表情がアバターまたは実際の顔で表示され、それらの反応がリスク選択にどう影響するのかを分析しました。

実験結果



結果として、アバター条件で提示された場合、参加者のリスク選択が増加することが判明しました。この現象は、特に「不確実」な選択肢がわずかに有利な状況で顕著に現れました。アバターが示す表情の曖昧性に対する反応も、リスク判断に影響を与える重要な要素であることがわかりました。

参加者の脳の扁桃体が関与していることも明らかになり、曖昧さに対する評価は、意志決定の背景に深く影響を及ぼしていることが示されました。このことは、アバターがリスクを伴う状況でヒトの行動に与える影響について新たな洞察を提供します。

今後の展望



この研究は、アバターを介したコミュニケーションが私たちの意思決定にどのような影響を及ぼすかを理解する上で、重要な知見となります。今後は、異なる性別のアバターや年齢差による影響、参加者の個性との関連など、さらに広範な調査が行われる予定です。また、教育現場や対人支援の分野におけるアバターの活用法についても研究が進められ、私たちの日常生活にさらなる革新をもたらす可能性があります。

本研究に関する詳細は、米国の科学誌「PLOS Biology」に掲載され、研究はJSTムーンショット型研究開発事業の一環として行われました。この研究成果がアバター利用の新たな可能性を浮かび上がらせることを期待しています。


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