医療・介護現場におけるカスタマーハラスメントの実態
株式会社ウィ・キャンが発表した『カスタマーハラスメント白書 2025年度版』は、医療や介護の現場でのカスハラが深刻化している現状を浮き彫りにしました。今回の調査では、カスハラ相談件数が995件、患者やその家族からの相談が1,306件、合計で2,301件の記録が分析されています。この白書は、2026年10月1日から法律でカスハラ対策が義務化されることを背景に、現場の実態を示し、さらなる対策の必要性を訴えています。
1. 相談件数の分布と組織介入の必要性
調査結果によると、相談件数の約7割が組織の介入が必要な「危険度3」の事例であり、これはある意味で警鐘を鳴らす内容です。995件の相談を危険度で分類したところ、危険度3が677件(68.0%)、危険度2が238件(23.9%)、危険度1が80件(8.0%)という結果となりました。驚くべきことに、危険度の高い事例が全体の約92%を占めていることからも、現場の状況が深刻化していることがわかります。
2. 予兆の見えにくさと深刻な影響
本白書で注目すべきは、予兆にあたる危険度1の相談件数がわずか8.0%にとどまっている点です。この現象は、労働安全の分野で知られるハインリッヒの法則に矛盾する結果となっています。本来、危険は予兆から始まることが一般的ですが、ここでは予兆段階で案件が表面化せず、深刻な状態へと進行していることが指摘されています。
3. 実態は年間1万件規模に達する可能性
危険度3の677件に基づき、ハインリッヒの法則を当てはめると、実際には軽微な事例や未相談の事例を含めて約7,000件に達すると考えられます。現場での記録に残らない事案も含めると、対応しているカスハラの事案は年間1万件規模に昇ると推計されます。これは医療・介護の現場が直面している問題の規模の大きさを示しています。
4. 相談時間の長さとその影響
相談1件あたりの平均時間は27.3分でしたが、30分を超えるものも381件(38.3%)に上り、実際には30分以上の時間を要する事務が進行していると考えられます。これは現場の職員にとって大きな負担となっており、迅速な対応が求められているのがわかります。
5. 行為者の特徴と行為内容
行為者の約半数は「利用者本人」であり、残りの半数は「利用者の家族」が占めています。具体的には、子供が35.7%、配偶者が9.6%、親・兄弟が5.2%という構成です。また、行為の内容は暴言が42.5%で最も多く、不当な要求が30.5%を占めています。
6. 構造的背景への理解と対策の必要性
本白書では、暴言型やリピート型などの行為を分類するだけでなく、「なぜ行為が止まらないのか」という背後にある構造の分析も行われています。最も多かったのは契約外要求で、組織がその構造を理解し、適切な対策を講じることが再発防止に必要であると強調されています。
7. 無償公開の意義
ウィ・キャンの濱川博招代表取締役は、カスハラは医療・介護だけに限らず、あらゆる業界で共通する問題であることを指摘しています。多くの人に白書を読んでもらうことで、現場の実態を理解し、社会全体で対策を考えるための出発点としたいという狙いがあります。
8. 提言とまとめ
2026年10月にはカスハラ対策が法的に義務化されます。企業や医療機関、介護事業所はその体制整備が求められ、小規模な組織ほどリソースが限られているため、こうした白書が参考になるでしょう。これを通じて、職員を守ることは利用者を守ることに直結するという理解が広まることを期待しています。
この白書の詳細については、ウィ・キャンの公式サイトで無償で公開されており、登録不要で閲覧が可能です。