中性子線技術が開くバイオガス発電の新時代
株式会社クォンタムフラワーズ&フーズ(QFF)が、環境省の支援を受けて実施する新しい事業についてご紹介します。QFFは中性子線育種技術を活用し、バイオマスからのメタン生成微生物叢を改良することを目指しています。これにより、バイオガス発電の効率を向上させ、温室効果ガスの削減にも貢献することを目指しています。
バイオマスエネルギーの課題
再生可能エネルギーとして注目されるバイオマスエネルギーは、地域資源を活かした持続可能な選択肢です。しかし、発電効率や安定性に問題を抱えています。特に、メタンはCO₂に比べて25倍の温室効果を持つガスであり、その削減は気候変動への対策でも特に重要です。QFFは、これらの課題を解決するために、特許技術「中性子線スピーディ育種®」を用いた微生物の改良に取り組んでいます。
中性子線育種技術の優位性
メタンの生成は多様な微生物が協力して行うため、その効率を高めるには微生物全体の改良が必要です。従来の遺伝子改変技術と比べ、中性子線育種は格段に効率的であることが特徴です。例えば、中性子線育種による突然変異の誘発率は、従来技術の15から300倍に達します。この技術によって、メタン生成のプロセスを根本から改善することが可能になるのです。
実証事業の内容
技術テーマ
中性子線を用いて微生物叢全体に突然変異を導入。
目的
メタン生成効率を最大で25%向上させること。
実施方法
1. バイオマス発酵液に中性子線を照射。
2. 各線量条件でのガス生成効率の変化を検証。
3. 有効な線量と必要なサンプル数を特定。
4. 改良された菌叢をスケールアップし、発酵槽レベルでの再現性を確認。
期待される効果
このプロジェクトにより、国内外のバイオガス発電の効率が最大25%向上すると見込まれています。これにより、年間124万トン以上のCO₂削減効果が期待できるため、地域経済の活性化と再生可能エネルギーの普及に大きく寄与するでしょう。
今後の展望
QFFは、実証成果をもとに「微生物叢改良型バイオマスシステム最適化サービス」として事業化を進めています。2030年度までに、日本国内で100件、海外では特にASEANや欧州市場を中心に600件の導入を目指しています。また、この事業は成果連動型で、既存設備に低コストで導入できるソリューションを提供します。
代表者のコメント
QFFの代表取締役CEO、菊池伯夫氏は、「中性子線育種技術の応用により、今まで困難だったバイオガス効率の大幅な改善が期待できると考えています。この取り組みを通じて、脱炭素社会の実現に貢献していきます」とコメントしています。
会社概要
株式会社クォンタムフラワーズ&フーズ
所在地:茨城県水戸市見川町2563-77 ルレーブ見川2-101
代表者:菊池伯夫
設立:2018年7月
事業内容:中性子線スピーディ育種を利用した植物・微生物の改良、AIを用いたゲノム解析、持続可能なエネルギー・食品分野への応用
公式サイト。