複雑系科学を応用した臨床組織科学の新たな可能性とは
臨床組織科学(COS)は、近年の組織変革のための新しいアプローチとして注目を集めています。このCOSでは、複雑系科学や神経科学、組織心理学と行動科学を統合し、組織の「見えない相互作用構造」を理論化し、それに介入するためのフレームワークを提供しています。
COSとその核心技法
COSの根幹をなす考え方は、単なる個人の行動変容を通じてではなく、組織全体の安定状態を能動的に再生産することにあります。具体的には、Field Gradient TheoryやLoop Conversion Design、Neural Base Designを用いています。これにより、組織の変革は、個人の意識や行動を超えて、より広範な組織アトラクターの遷移として捉えられるのです。この理論は、特に「emergence bridge」と呼ばれる概念を通じて、個人の行動変容と組織レベルの変化を効果的に結びつけます。
FredricksonのBroaden-and-Build理論
Barbara FredricksonによるBroaden-and-Build理論は、ポジティブな感情が人間の認知や行動の幅を広げ、長期的な資源の構築につながる可能性を示した重要な理論です。COSではこの理論を基に、Loop Conversion Designと3Good1Moreの構造的理解を深めます。特に、肯定的な観察が先行することで発展的なフィードバックが脅威ではなく、学習情報として処理されやすい状況を作り出す可能性があるという仮説に注目しています。
3Good1Moreの意義
3Good1Moreは、さまざまな状況において適用される新たなフィードバック技法です。この手法では、まず3つの肯定的な観察(Good)を行った後で1つの発展的な観察(More)を行います。しかし、これが単なる「褒める」技術ではありません。3Good1Moreの真の目的は、受け手の注意を広げ、行動の選択肢や改善の可能性を意識させる条件を整えることにあります。
COSは、Fredricksonの理論を基に、言語やコミュニケーションにおけるプラスのバイアスを強調し、組織コミュニケーションが批判的になる原因を明らかにします。
ポジティビティ比率との違い
3Good1Moreの「3:1」という比率については、ポジティビティ比率と混同されることがありますが、COSではこれを固定概念として捉えません。3はあくまでも実践的な初期値であり、組織の文化や状況に応じて柔軟に扱われるべきものです。この手法が単に口頭の技術にとどまることを回避するために、日常の業務プロセスに組み込むことが重要です。
組織リズムに埋め込む
3Good1Moreは、単発の会話術ではなく、組織におけるルーチンやレビュー、フィードバックの場に埋め込まれ、日常的に実践されるものであるべきです。こうすることで、個人の気分やコミュニケーション能力に影響されず、組織全体において肯定的な観察と発展的な観察の連結が実現されます。
組織学習の新たな視座
代表取締役の山中真琴氏は、3Good1Moreの本質について「単に明るいことを言うのではなく、必要な批判を行う場面でも、有効なフィードバックが得られるような方法を構造化することが核心」と述べています。このように、COSは、組織内の学習を妨げる状況を打破するための新たな道筋を拓くことを目指しています。
結論
COSと3Good1Moreは、ただの理論にとどまらず、実践的な指針として、企業や組織の変革に寄与する有力な手法となることが期待されます。今後、さまざまな現場での実証を通じて、その効果が証明されることを楽しみにしています。これからもCOSに関連する理論や手法の探求は続いていくでしょう。