短時間の運動が子供の認知機能を向上
最近の研究によって、3分30秒という短時間の軽運動が子供たちの認知機能を向上させることが分かりました。この研究は、早稲田大学の内藤隆氏を中心とした研究グループによって実施され、30名以上の小学5年生から中学2年生を対象に行われました。軽運動を行った後、子供たちの気分が向上し、覚醒度も維持されることが確認されています。
研究の背景
近年、運動不足や座位時間の増加が子供たちの心身に悪影響を及ぼすという社会問題があります。世界の80%以上の子供が十分な運動を行っておらず、特に日本では座りっぱなしの時間が増加しています。そのため、運動が認知機能や気分にどのように影響するかを解明することが求められていました。
実験方法
本研究では、実験参加者となった子どもたちが、安静条件と運動条件の2つを体験しました。安静条件とは、15分間座っているだけの状態であり、運動条件ではその間に3分30秒の軽運動を行います。運動内容はストレッチや片足バランス、手指の運動などを取り入れ、特別な道具がなくてもその場で行えるものでした。
結果
実験の結果、運動を行ったグループは、認知機能を示す「実行機能」が向上し、反応時間が短縮される結果が得られました。一方で、安静条件は有意な変化が見られず、運動による肯定的な影響が確認できました。また、運動後は快適度が上昇し、座り続けたことによる覚醒度の低下を防ぐ効果も認められました。
実施の意義
この短時間の軽運動プログラムは学校や塾で簡単に取り入れることができ、授業の始まりや間の休憩時間に行うことで、子供たちの学習効率を向上させる可能性があります。特に、座っている時間が長い学習環境には効果的だと期待されています。心身の健康を促進し、運動不足を解消する手段として有望です。
今後の展望
本研究は対象を小学5年生から中学2年生に限定しており、今後は他の年齢層や環境での効果を検証する必要があります。また、運動を習慣化することによって、長期的な健康や学習効果にどのような影響を与えるのかも探求されていくでしょう。このような取り組みが広がれば、運動不足や座位時間の短縮にも寄与することが期待されます。
研究者のコメント
内藤氏は「少しでも体を動かすことが、子どもの心や脳にとって重要であることを示す結果」と述べています。今回の研究成果を受け、教育現場での実践をより広めるためのツールを開発し、さらに研究を進める意義があると語っています。その効果は子どものみにとどまらず、大人にも応用できる可能性があることも指摘されています。
この研究の成果は、2025年12月5日に『Scientific Reports』にて発表されました。子どもたちのメンタルヘルスや学習環境の改善に寄与する貴重な知見です。教育現場における軽運動プログラムの導入を促し、未来の世代の健康を守る取り組みに期待が高まります。