デヴィッド・ボウイの魂が宿るミュージカル『LAZARUS』
世界的なロックスター、デヴィッド・ボウイの遺作として知られるミュージカル『LAZARUS』が、2025年5月31日から6月14日まで横浜のKAAT神奈川芸術劇場で、また6月28日と29日には大阪のフェスティバルホールにて日本初演を迎えます。この特別な舞台の準備が進む中、稽古場の熱気をレポートしてきました。
劇の背景と作品の概要
『LAZARUS』は、2016年に肝臓がんでこの世を去ったデヴィッド・ボウイが生前に手がけた最後の舞台作品です。このミュージカルは、ボウイ自身が1976年に主演したSF映画『地球に落ちて来た男』の続編として、主人公・ニュートンのその後を描いています。自伝的な内容ではなく、ボウイと劇作家エンダ・ウォルシュの独自の視点で構成されています。
劇中には、ボウイの代表曲『All the Young Dudes』や『Changes』、『Heroes』などのクラシックな楽曲が含まれており、さらにボウイが本作のために書き下ろした『No Plan』や『Killing a Little Time』、『When I Met You』も物語を深める要素となっています。
稽古場の様子
稽古場に入ると、主演の松岡充が歌う『Absolute Beginners』の歌声が響き渡りました。この場面は、松岡が演じる異星人ニュートンが、好意を寄せる女性エリー(鈴木瑛美子)に全身で誘惑されるシーンです。エリーの動きは、ボウイのミュージック・ビデオに登場するキャラクターを彷彿とさせました。全体の歌唱は英語で行われるため、ボウイの遺志を尊重しながら歌唱や発音の指導も徹底されています。
稽古が進む中、演出の白井晃氏が出演者たちに声をかけ、「各シーンで何を表現するかに重きを置き、緊張感を持たせるように」と指示を出しました。続けてブロック稽古が進む中、松岡はそのキャラクターを掘り下げ、ニュートンがエリーの手を振りほどく場面や、エリーを誘惑するバレンタインの歌唱シーンなど、緊張感のあるシーンが展開されました。
デヴィッド・ボウイの亡き後の影響
ボウイの遺作とはいえ、本作は彼が病に向き合う中で制作された作品であり、深い意味を持つ「遺書」ともいえます。松岡は、ボウイの魂を表現することに全力を注いでいます。物語は、ニュートンとエリーとの間に芽生える希望と苦悩が描かれており、キャストはボウイが創り上げた楽曲を通じてその思いを伝えようと奮闘しています。
特にボウイが新たに作った楽曲「LAZARUS」には、復活の意味が込められており、ニュートンの帰還を願う姿は感動的です。与えられた役割を越えて、各キャストの演技はボウイのメッセージを受け継ぐ重要性を感じさせます。
稽古の終盤、松岡が手を天に伸ばすインパクトのあるシーンでは、ボウイがそこに存在しているような感覚さえ覚えました。白井氏のアドバイスが遮られることなく重みを失わず続く中、舞台の深いメッセージ性が込められていることを感じました。
『LAZARUS』の未来に向けて
ボウイの遺したメッセージは、観る者それぞれに異なる感銘を与えてほしいという思いです。ボウイが演じる男の姿は、普遍的なテーマを持ち、観客にとっても何らかの形で関わりを持つことでしょう。日本版ミュージカル『LAZARUS』は、2025年5月31日からの公演に向けて期待が高まります。ボウイと坂本龍一の友情も交わりながら、この舞台がより多くの心に響いていくことを願っています。
公式サイトではキャストコメントや新しい情報が発表されていますので、お見逃しなく。期待が高まる『LAZARUS』の始まりを共に楽しみにしましょう!