日立がAIエージェントを活用し品質保証業務の効率化と対応力向上を実現
株式会社日立製作所が、電力や鉄道、上下水道などの社会インフラを支える大みか事業所において、AIエージェントを品質保証業務に導入しました。この取り組みにより、熟練者の暗黙知を形式知化し、機器故障などのトラブルへのお客さま対応を大幅に改善しています。実証実験は2024年10月から2025年3月まで行われ、さまざまな問い合わせに迅速かつ正確に対応できる仕組みを構築しています。
AIエージェント導入の背景と目的
製造業の品質管理の現場では、特に熟練者の経験や勘に頼る側面が強く、品質の安定化や技能伝承において大きな課題が存在しています。エネルギーやモビリティ、産業などのOT領域では、長期間稼働するシステムが多く、お客さまからの問い合わせに関する保守運用の情報が蓄積されています。この状況下で、トラブル対応には経験豊富な熟練者の判断が求められ、若手担当者が迅速に適切な判断をするのは難しいという課題がありました。
そこで、日立は膨大な過去の保守運用情報を活用し、トラブルや問い合わせに対する品質保証業務支援ツールをAIエージェントで強化しました。このツールを使うことで、熟練者がどのように情報を検索しているかをデータ化し、そのノウハウを若手担当者に伝えることができるようにしました。
実証実験の具体的な成果
本実証実験を通じて、AIエージェントの導入による以下の三つの主要な成果が確認されました。
1.
トラブル事例検索の精度向上: 生成AIを用いた情報検索により、壊れた機器に関する問い合わせの際に類似事例を高精度で抽出。担当者は過去のナレッジを効果的に利用でき、検索時間を約9割削減することに成功しました。
2.
品質レベルの向上: 特徴量の抽出や分析にAIを利用することで、熟練者の過去のトラブルデータへのアクセスが容易に。これにより、不具合情報を時系列で把握できるようになり、迅速な対応が可能になりました。
3.
初報レポートのドラフト生成: こちらも生成AIを活用し、初報レポートのドラフトを迅速に作成することができるようになりました。熟練者が不在時でも初動対応ができ、これにより顧客満足度の向上が見込まれています。
今後の展開
日立はAIエージェントの活用をさらに拡大し、2026年度までに鉄道システム分野を超えて、電力や上下水道など広範な品質保証業務に適用する計画です。この取り組みによって、社会インフラを支えるOT領域においても、生成AIを駆使し技能伝承や生産性向上といった社会的課題に貢献していく意向です。
実際の業務を想定した質問と模範解答を100件以上作成し、熟練者のフィードバックを反映させた評価基準の策定も進めており、これにより暗黙知の獲得が進むと共に、品質保証業務の効率化と向上を加速させています。今後も人材不足や業務の属人化といった課題に対して、製造業向けのソリューション開発を続けていく方針です。
まとめ
株式会社日立製作所は、AIエージェントを取り入れた品質保証業務の高度化により、顧客への対応力を強化しています。デジタル技術の進展に伴い、熟練者の知見を効率的に活用できる体制を築くことで、今後の品質管理やトラブル対応の現場において更なる飛躍が期待されます。