小児がん医師の葛藤を描いた感動のドキュメンタリー
名古屋テレビ放送が制作した『メ~テレドキュメント 救いの時差 ~ある小児がん医師の呻吟~』が、第31回PROGRESS賞の最優秀賞を受賞しました。この受賞は、2020年の「メ~テレドキュメント面会報告~入管と人権~」以来5年ぶりの快挙であり、この番組がいかに重要なテーマを扱ったかを物語っています。
PROGRESS賞は、テレビ朝日系列の番組審議会委員によって選出されるもので、放送番組の質的向上を目指した活動から生まれたものです。その名の通り、制作者たちの努力を評価し、称える意義がある賞です。昨年度放送された自社制作の番組の中から1作品が選ばれ、ブロック審査や全国審査を経て受賞者が決定します。
 物語の核心 ~小児がんと戦う子どもたち~
このドキュメンタリーでは、名古屋大学病院に勤務する小児科医、高橋義行さんの苦悩が描かれています。高橋医師は、がんによって命を落とす子どもたちの痛みを何度も目の当たりにしてきました。特に、彼が扱った患者の一人である久保田ちひろちゃんは、再発した神経芽腫という厳しい状況に直面しています。ちひろちゃんは、3歳で一度は退院したものの、再びがんが再発し、さらなる治療が求められています。
ちひろちゃんの症例は、日本国内では治療法が見つからず、イタリアでの新しい薬による治療に望みをかけることになります。同じく名古屋大学病院で治療を受けていた髙橋結衣ちゃんも同様の高リスク群に属していましたが、イタリア行きの希望は叶わず、日本で新薬の承認を待つことに。高橋医師は、イタリアでの治療に対して同様の治療法を研究していますが、日本国内での実行には多くの障害が存在します。なぜ、日本で命を救えないのか。国や製薬会社、医療機関が抱える問題を掘り下げています。
 受賞を受けてのコメント
受賞式に出席した番組のプロデューサー、村瀬史憲さんは、受賞の意義を「一人でも多くの命を救おうと研究を続ける高橋医師の真摯な姿勢が、委員の心に届いた結果」と語っています。また、ディレクターの小澄珠里さんも、受賞に感謝の意を示し、取材中に亡くなった子どもたちのためにも、ドラッグロスの問題を伝え続けたいとの思いを表現しました。
 医療の時差と人間の闘い
このドキュメンタリーは、患者と家族だけでなく、医師自身の人生や葛藤にも焦点を当てており、多くの人々が共感することでしょう。カメラは日本の現状から、アメリカやイタリアに至るまで、医療の現実を追いかけます。新薬の開発が進まない背景や、病気の進行との時差を追う中で、視聴者は静かな闘いをする人々の姿に胸を打たれることになるでしょう。
この貴重なドキュメンタリーは、2025年3月14日(金) 深夜1時30分からテレビ朝日系列で再放送される予定です。ぜひ、多くの方々にご覧いただき、医療の現実に目を向けていただきたいと思います。
 
