高純度L-メントール
2025-02-27 14:25:04

計算科学が生んだ高純度L-メントール製造酵素の革新

計算科学が生んだ高純度L-メントール製造酵素の革新


産業技術総合研究所と天野エンザイムの研究チームが高純度L-メントールを合成する新しい酵素を開発しました。この技術は、化粧品や医薬品など、多くの分野で需要が高いL-メントールの供給問題を解決する可能性を秘めています。

L-メントールとは


L-メントールは、ミントの独特の香りと冷却効果、さらには鎮痛効果により、化粧品や医薬品の重要な成分として広く使用されています。しかし、近年の需要の増加に伴い、従来のハッカやミントからの抽出だけでは市場のニーズを満たすことが難しくなっています。このため、L-メントールの工業的な生産が求められています。

従来の課題


従来の工業生産では、L-メントールとD-メントールの混合物が生成されるため、高純度のL-メントールを得るためには、高度な化学合成プロセスが必要でした。このプロセスは環境負荷も高く、コストの面でも問題がありました。そこで、酵素を利用した工業的な製造方法が注目されています。

新たな酵素の開発


産総研の研究者たちは、Burkholderia cepaciaという微生物由来のリパーゼをベースに、計算科学を用いて酵素の改良に成功しました。彼らは、酵素と基質の結合構造を分子動力学シミュレーションを行い、最適な改変部位を特定しました。その結果、L-メントールの純度を240%向上させ、製造コストの削減も実現しました。

研究の意義


新しく開発された酵素は、光学純度が99.4%に達し、香料として直接使用するのに必要な純度を確保しています。この技術は、環境負荷が少なく経済的にも優れたプロセスでの高純度L-メントールの製造に貢献し、今後の製品化が期待されています。

今後の展望


天野エンザイムは、この新しい酵素を用いた製品化を進めており、高機能な酵素製剤の供給を目指しています。計算科学による酵素設計は、製造プロセスの省エネルギー化と低コスト化に貢献し、「スマートセルインダストリー」の実現に向けた重要なステップとなります。工程の簡略化によって、企業が効率的に高機能製品を製造できるようになることが期待されているのです。

結論


高純度L-メントールを生産する新しい酵素の開発は、製品の品質向上と同時に環境への配慮も図ることができる画期的な進展です。今後の進展から目が離せません。研究成果の詳細は、2025年に発表予定の「Journal of Agricultural and Food Chemistry」に掲載されるとのことです。


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