社会学的視点で再度見る東京の風景
2024年12月17日、集英社新書から新たに刊行される『東京裏返し都心・再開発編』は、著者の吉見俊哉が再び東京の街を探求する一冊です。本書は、前作『東京裏返し社会学的街歩きガイド』の続編として、東京都心南部の再開発地域に焦点を当てています。著者は、東京オリンピック後も進む大規模な都市開発を背景に、私たちがどのようにこの都市と向き合うべきなのかを問いかけています。
再開発の進行と社会問題
東京では現在、渋谷駅前の再開発や、麻布台ヒルズなどの巨大商業施設が立ち上がりつつあります。また、神宮外苑の樹木伐採問題など、都市計画が引き起こす社会問題も無視できません。こうした現象を通じ、私たちは都市の成り立ちや記憶を再考する必要があると言えるでしょう。
「街歩き」の重要性
吉見氏は、街歩きを通じて都市の歴史や社会構造に新たな視点を加える方法を提案しています。『東京裏返し』では、都市の様々なポイントを歩き、そこに残る過去を掘り起こし、それを理解する手段としての「街歩き」を強調しています。単なる散歩ではなく、街を記録として理解し、批評する実践としての街歩きです。
本書の内容について
本書は、全7日間の街歩きで構成されており、それぞれのセクションでは、都市の軍事施設の痕跡や消えた川、再開発の影響を受けた地区の風景などを探ります。具体的には、以下のような内容が含まれています:
- - 第一日: 渋谷川沿いを歩きながら、駅から丘、丘から川へと、都市の構造を見る。
- - 第二日: 古川流域を探索し、街の変容がもたらした現場との遭遇。
- - 第三日: 目黒川上流域で、記憶の地層を体感する。
- - 第四日: 三田用水沿いから過去の軍都の面影を読み解く。
- - 第五日: 蟹川の裏側に広がる新宿歌舞伎町の風景を考察。
- - 第六日: 青山、六本木、赤坂の川筋を歩きながら軍都の歴史を見る。
- - 第七日: 皇居を背にして、都心の構造を再考する。
このような日々の街歩きを通じて、私たちは東京の隠された記憶を発見し、再開発の影響を考える手がかりを得ることでしょう。
吉見俊哉氏の経験と視点
吉見俊哉氏は、社会学や都市論の専門家として、東京におけるカルチュラル・スタディーズの発展に寄与してきた著名な学者です。彼の研究は、都市の歴史を探求することを通じて、現代社会における多様な問題を浮き彫りにすることに貢献しています。
新刊『東京裏返し都心・再開発編』は、東京の都市構造や過去を新たな視点で読み解くための一助となることでしょう。この本を手に取ることで、私たちは身近な都市に対する理解を深めるとともに、その記憶を大切にする姿勢を育むことができるはずです。
新刊情報
- - 作品名: 東京裏返し都心・再開発編
- - 著者: 吉見俊哉
- - 発売日: 2024年12月17日
- - 価格: 1,188円(10%税込)
- - 判型: 新書判
- - ページ数: 352
- - ISBN: 978-4-08-721343-0
ぜひ、あなたの手で東京の新たな側面を発見してみてはいかがでしょうか。