ニパウイルスワクチン第1相臨床試験のスタート
2026年6月15日、帝京大学の米田美佐子特任教授らの研究チームが、ニパウイルス感染症を対象とした第1相臨床試験をベルギーで開始しました。この試験は、世界的に公衆衛生上の脅威とされるニパウイルスに対抗するワクチンの安全性や免疫誘導能を検証することを目的としています。
ニパウイルスとは?
ニパウイルスは、1997年にマレーシアで初めて確認された新興感染症です。その後も南アジアを中心に流行が見られ、致死率が最大90%に達することもあるため、深刻な公衆衛生上の問題となっています。感染者は致死性の脳炎や重篤な症状を引き起こすことがあり、ヒトからヒトへの感染も報告されています。また、自然宿主であるオオコウモリ類が世界中で広く分布しているため、感染の拡大が懸念されています。
日本発のワクチン研究
米田教授が中心となるこの研究グループは、麻疹ウイルスをベクターとしたニパウイルスワクチン(MV-NiV)の開発に取り組んできました。麻疹ワクチンは、高い安全性と効果が知られており、その特性を活かすことでニパウイルスに対抗する新たなワクチンの実用化を目指しています。ハムスターやサルを用いた研究によって、MV-NiVがニパウイルスに対して高い防御能を示すことが確認されました。
臨床試験の意義
この第1相臨床試験が成功を収めれば、バングラデシュでの第2相臨床試験へ進む道が開かれます。これにより、ニパウイルス感染症の予防に向けた重要なステップが確実に進展することが期待されます。また、この研究が意味するのは、開発途上国における「顧みられない感染症」に対して、安全で安価なワクチンを提供できる可能性です。これにより、流行地域での感染拡大を抑制する貢献ができると考えられています。
国際共同の研究体制
本試験は、帝京大学だけでなく、東京大学をはじめ、欧州ワクチン開発支援機構やスタンフォード大学など、国内外の15機関以上が協力して推進しています。これまでに6年以上にわたって、臨床試験用のワクチン製剤の製造が進められ、EUの厳しい規制をクリアすることができました。
目指す未来
新型コロナウイルスの影響により、感染症対策が強く求められる現代において、このニパウイルスワクチンの開発は非常に意義があります。日本からの研究成果が国際的に広がり、ワクチンとしての実用化が実現すれば、世界的な感染症対策に対して大きな貢献を果たすことが期待されます。
今後の研究の進展に注目し、感染症予防の新しい地平を開く日本発のワクチンに期待が高まります。