令和7年版『TKC経営指標(BAST)』の概要
2023年6月2日、TKC全国会は令和7年版の『TKC経営指標(BAST)』を発表しました。本指標は、昨年1年間(2024年1~12月)における年商100億円以下の中小企業26万898社に基づき、経営成績と財政状態を分析した結果を示しています。これにより、企業経営の実態を捉え、今後の成長戦略に役立つデータを提供しています。
直近の結果から見る中小企業の成績
1. 黒字企業割合の上昇
令和7年版では、中小企業の黒字企業割合が前年から0.4ポイント増加し、53.9%に達しました。産業別では、「宿泊業、飲食サービス業」の黒字割合が最も低く35.7%ですが、前年に比べて3.6ポイントの上昇が見られ、改善傾向が伺えます。
2. 売上高の継続的な増加
全産業の平均売上高は、239,874千円となり、3年連続で増加しています。この成長は、特に宿泊業と飲食サービス業で顕著で、昨対比110.9%という結果を記録しています。中小企業の売上が堅調に伸びているのは、業界全体の回復を示唆しています。
3. 経常利益の上昇
経常利益も4年連続で増加し、8,809千円に達しています。限界利益が前年から4,256千円増加したことが要因で、また、給与や賞与も増えています。この流れは、企業のコスト管理がうまく進んでいることを示しています。
4. 労働環境の変化
平均従事員数が前年より0.3名増加し、全産業の労働分配率は53.6%と若干低下しましたが、従業員一人当たりの売上高と人件費はともに増加傾向にあります。これにより、中小企業の資源をより効率的に活用できていることが伺えます。
5. 借入金の減少
全産業のキャッシュ・フロー計算書によると、短期・長期借入金の純額が前年から共に減少しており、流動性の改善が見られます。これは、企業がより健全な財務状態に向かっている証拠と言えるでしょう。
TKC経営指標のロードマップと今後の展望
この『TKC経営指標(BAST)』では、優良企業の定義が定められており、自己資本比率や限界利益など多数の指標が含まれています。これらの指標をもとに、企業は自身の立ち位置を把握し、改善への道筋を見出すことができます。また、TKC全国会は、地域金融機関と連携し、企業の持続的な成長を支援する努力を強化しています。
専門家の意見
神戸大学の経済経営研究所・家森信善教授からは、TKC経営指標の信頼性と実用性が高く評価されています。特に、データの信用性と会計情報の重要性が強調され、企業改善のための指針としても大変有効であるとしています。金融機関でもこのデータを活用し、融資審査や経営支援に役立てることで、より多くの中小企業が成長を遂げることが期待されています。
まとめ
令和7年版『TKC経営指標(BAST)』は、経済回復が進む中で中小企業の明るい未来を示しています。今後、これらのデータを活かして、自社の経営戦略を見直し、さらなる飛躍を目指す企業が増えることでしょう。企業経営の実情を的確に把握するための有用な資料として、大いに活用されることを願います。