子どもの主体的調理体験が生み出す幸せのホルモンとは
私たちの社会において、食の重要性はますます高まっています。子どもが食に関与することは、自らの健康を考え、さらには親子の絆を育む上でも非常に大切です。キユーピー株式会社が行った最近の研究は、子どもたちが主体的に調理に取り組むことで、彼らの唾液中に含まれるオキシトシン量が有意に増加することを確認しました。
この研究の成果は、2025年12月に開催された第23回日本機能性食品医用学会総会で発表され、見事に「最優秀演題賞」を受賞しています。特に興味深いのは、オキシトシンが「幸せホルモン」として知られている点です。このホルモンは愛情や絆を深める働きがあり、心の健康に寄与すると考えられています。
研究の背景と目的
キユーピーは、親子で行う共同調理の中でも、子どもの自主的な参加が親子の関係を深めることを体感的に重視しています。具体的には、小学校を対象にした出前授業や、植物を学ぶ体験型の教室を通じて、子どもたちに「食」を学ぶ機会を提供しています。今回は特に、調理の過程を通じてどのようにオキシトシンが分泌されるのかを、科学的に検証しました。
研究方法と結果
この研究には、小学校1年生から6年生までの男女32名が参加しました。子どもたちは主体的に野菜や卵を使ったホットドッグの調理に挑戦しました。この調理体験の前後で唾液を採取し、オキシトシン量を分析しました。
結果として、調理体験後には唾液中のオキシトシン量が有意に増加したことが確認されました。これは、子どもたちが自己主導で行動することで得られる達成感が精神的な満足感をもたらし、その結果、オキシトシンが分泌されたことを示唆しています。特に、調理体験前と後でのオキシトシン量の比較では、親の労働状況に関わらず一様に分泌が促されたという興味深いデータも得られました。
食育活動の重要性
キユーピーは、「子どもたちの笑顔のサポーター」であることを2030ビジョンに掲げています。2002年からの「マヨネーズ教室」や、深谷テラスで行う農業体験など、多様な食育活動を通じ、未来を担う子どもたちの心と体の健康をサポートしています。今後も食の楽しさや大切さを伝える取り組みを続けていく考えです。
まとめ
今回の研究により、子どもたちが主体的に調理に携わることの心理的および生理的な意義が示されました。オキシトシンはただの「幸せホルモン」ではなく、親子の絆や社会的なつながりを形成する上でも不可欠な要素であることが実証されたのです。これからも多くの子どもたちが調理体験を通じて、より豊かな人間関係を築いていくことを期待しています。