東京農業大学が提案する新たな酵母の系統分類
東京農業大学の研究チームが、赤色酵母サイトエラ属(Saitoella)の全ゲノム情報を解析し、これまで不明だった系統分類的位置を明らかにしました。この研究により、サイトエラ属は「サイトエラ綱(Saitoellomycetes)」として提案され、酵母の世界に新たな一歩が刻まれました。
発表の背景
赤色酵母は、醸造やパン作りに利用されるSaccharomyces cerevisiaeに代表される単細胞性の真菌群です。その中でもサイトエラ属は、タフリナ亜門(Taphrinomycotina)に属し、独自の形態と生化学的性質を持っています。しかし、これまでの研究では、サイトエラ属の系統位置に関しては明確な結論が得られていませんでした。これを受け、東京農業大学のチームがSaitoella coloradoensisやSavitreella phatthalungensisの全ゲノム解読に取り組んだのです。
研究の詳細
研究チームは、ロングリードシーケンサーを使って各酵母の全ゲノムを解読しました。その結果、サイトエラ属は他の分類群とは異なることが確認され、「サイトエラ綱」として新たに分類されることが提案されました。特にSaitoella coloradoensisでは、38本もの染色体が形成されていることが明らかとなり、これは知られている他の菌類の中でも最多の数です。
この新たな知見は、サイトエラ属が亜門内の多くのグループに対して類似の遺伝子配列を持つことを示しており、これは古代的な遺伝的特徴を保持していることを示唆しています。さらに、遺伝子アミノ酸配列の解析から、既知の分類群との系統関係が不明瞭であることも示されました。
サイトエラ綱の意義
サイトエラ属は、コエンザイムQ10やアミン化合物の生産に利用できる可能性があり、今回の研究成果は産業界への影響も期待されています。また、「サイトエラ」という名前は、著名な微生物学者、斎藤賢道博士に由来していて、日本人の名前が大きな分類群に冠されたことが注目されます。
未来への期待
今後の研究においては、サイトエラ属の工業化利用や生態系における役割について深く探究していく必要があります。このような基礎生物学の進展が、酵母の新たな利用法を開拓し、私たちの生活に役立つことが期待されます。
この研究は公益財団法人発酵研究所の支援を受けて行われ、研究成果は専門誌『Mycologia』に掲載されています。
今後も、東京農業大学の活躍から目が離せません。