震災を知らない次世代が挑む新たな舞台
2024年1月25日、テレビ大阪より放送されるドキュメンタリー「6年3組の阪神大震災~30年「記憶の溝」~」は、震災を知らない世代が報じる新たな試みです。この作品は、阪神・淡路大震災の経験を語り継ぐ劇団自由人会の活動に密着し、当時を知る者と知らない者の間にある「記憶の溝」に焦点を当てています。
阪神・淡路大震災は1995年1月17日、6434人の尊い命を奪いました。その後、震災の記憶を伝え続けているのが、神戸を拠点に活動する「劇団自由人会」です。彼らの代表作「6年3組の阪神大震災」は、小学生たちが綴った学級通信を基にした舞台化作品であり、これまで500回以上の公演を重ねてきました。
今年で初演から30年を迎える今回の公演では、特に新しい試みとして、若手の杉野じんべえさんが初めて演出を担当します。杉野さん自身も震災の影響を受けており、全く別の視点で作品制作に臨むことになりました。彼は観客に親しみやすさを感じてもらうため、朗読劇としての形式から、歌とダンスを取り入れた音楽劇へと進化させています。
しかし、震災当時の子どもたちが主役という設定の作品に出演する若者たちは、ほとんどが当時生まれていなかったか、記憶がない世代です。このため、彼らには震災の真実を理解し、演じる役柄に感情を込めることが難しいという挑戦があります。役者の一人、猫柳ルカさんは特に亡くなった上出真理子さんを演じるシーンで、感情表現に苦しむシーンが見られました。
杉野さんは演技指導の中で、猫柳さんの感情表現に何か「引っ掛かり」を感じ取りました。それが彼女にとって、これまでのパフォーマンスを越える重要な瞬間に繋がるのかもしれません。
次に、劇団の若者たちは、原作の舞台となった樋ノ口小学校に赴き、当時の担任教員である松田満さんから貴重な体験談を聞く機会を得ました。震災のリアルな記憶を教員から直接聞くことで、彼らは役柄に深い理解を持ちながら本番に臨むことができました。
本番は2日間にわたって行われ、400人以上の観客が劇場に足を運びました。彼らの中には、松田先生のお姿もあり、感動的な瞬間を共にしました。果たして、若い役者たちは「記憶の溝」を埋めることができたのでしょうか?
このドキュメンタリーは、社会における「記憶の溝」がどう形成され、それをどう乗り越えていくかという問いかけをしています。震災を語り継いでいくことの重要性を再認識させられる作品であり、視聴者に強いメッセージを伝えます。