AI時代のリスクに備える総務の新たな役割
2026年6月18日、東京ビッグサイトで開催された「総務人事経理Week」の中で、株式会社日本総険と合同会社DMM.comの特別講演が行われました。この講演では、演者としてDMM総務部長の高橋応和氏と日本総険の葛石晋三が登壇し、AIがもたらす次世代リスクへの備え方について議論しました。テーマは「総務∞〜AI時代の保険対応〜」。
VUCA/BANI時代のリスクマネジメント
高橋氏は、現代がVUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)及びBANI(Brittle, Anxious, Nonlinear, Incomprehensible)という激動の時代にあると強調。その中で総務が担うべき役割が変わってきていることを指摘しました。特に、AIの普及によって生じるリスクは多様化しており、従来の対応方法では対処しきれない可能性があります。
総務シンカ論の提示
高橋氏が提案した『総務シンカ論』は、3つの「化」—深化、新化、進化—によって最終的に真価を提供し、時間を創出するという考え方です。リスク管理の専門家である葛石との対談を通じて、見えないリスクの構造化の手法について探求が進みました。
生成AIによる新たなリスク
講演の前半では、生成AIの業務利用に伴うリスクについての具体例が紹介されました。エンジニアによる生成AIの利用において、機密情報が外部に漏れてしまう危険性や、AIの誤情報に基づくトラブルの事例がいくつか挙げられました。このようなリスクに対して、バックオフィスとして適切な確認プロセスの設計が求められます。
- - 機密情報の漏洩事例: エンジニアが生成AIに機密情報を入力した結果、情報が外部サーバーに送信される事故が起きました。
- - AIのハルシネーション: 顧客対応チャットボットが間違った情報を提供し、損害賠償の判決を受けた事例も報告されました。
- - ディープフェイク詐欺: AIを用いた詐欺事件の具体例も紹介され、企業は新たな詐欺手法に対処する必要性が強調されました。
法人保険の再定義
また、法人保険の本質についても再定義が行われました。現在の保険市場では、「難しいから代理店に任せる」という流れが見受けられますが、これはリスクを適切に管理するための不十分なアプローチとされています。保険の本質を、統計学、経営学、哲学の視点から捉え直す必要があります。
4つの基本対応戦略
講演では、リスクに応じた4つの基本的な対応策が提示されました。これにより、企業はより合理的なリスクマネジメントを実現できるようになります。
1.
回避: 致命的なリスクは保険で対応せず、事業の中止を検討。
2.
転嫁: 見込まれる損害リスクを明確にし、大規模なリスクのみを保険で外部に転嫁。
3.
低減:日常的なリスクに対しては、予防策を講じて損害を削減。
4.
保有: 小さなリスクには対策をかけず発生時に自己負担。
葛石は、企業のリスクは多様で一律ではなく、必要な保険は企業独自で構築することが重要だと述べました。パッケージ化された保険に頼らず、自社のリスクを明確に可視化することが求められます。
リスクマップの導入
具体的なリスク管理手法として、企業ごとのリスクを可視化する「リスクマップ」が提案されました。これにより、企業は自社のリスクを科学的に理解し、対応策を適切に選定することが可能になります。
深掘りライブコンサルティング
最後に、「深掘りライブコンサルティング」では、会場参加者の質問に対するリアルタイムの回答が行われ、多くの参加者がメモを取りながら耳を傾けました。AI導入に伴う脆弱性や賠償リスクなど、具体的な課題へのアドバイスもあり、参加者たちの理解が深まりました。
結論: 次世代リスクへの備え
講演の最後には、総務職の役割が今後ますます重要になることが強調されました。企業が不確実性を迎え撃ち、挑戦の基盤を築くためには、科学的なリスク管理が必要です。総務が新たな価値を提供できる可能性を秘めていることを再認識させられた、意義深い講演でした。今後の日本総険グループの取り組みにも期待が寄せられます。