VR技術が実現する多様性を尊重した教室デザインの未来

国立研究開発法人産業技術総合研究所（以下、産総研）と学校法人角川ドワンゴ学園がコラボレーションし、VR（バーチャルリアリティ）を活用した新たな教室デザインのプロジェクトを進めています。これは「生徒目線による居心地の良い教室」をテーマに、高校生が求める理想の学びの空間をバーチャル空間で再現する試みです。

生徒の個性を尊重する空間の必要性

近年、個性と多様性が尊重される社会が求められる中で、教育機関もその流れに乗る必要があります。日本では、タブレットやオンライン教材を使用したカスタマイズされた学び方が浸透しつつありますが、教室自体の設計においては生徒の個性や特性を反映することはあまり行われてきませんでした。そのため、生徒が教室のデザインに参与し、意見を反映させることが求められています。

VR技術で実現する新たな教室デザイン

産総研では、人の認知行動を考慮した“伝わるデザイン”や“体験デザイン”を研究しています。これらの知見を元に、VRを利用したユーザー主導のデザイン手法が採用されました。このプロジェクトでは、3日間のワークショップが開催され、N高等学校とS高等学校の生徒9名が参加。生徒たちはそれぞれの視点から「居心地の良い教室」のデザインを考えました。

ワークショップでは、生徒の意見を尊重しながら、3つの異なる教室デザインが具体化されました。各教室のデザインは以下の通りです：

【グループA】

- 個人で作業に集中するスペースとリラックスエリアを併設
- 個性を表現する展示スペースの配置

【グループB】

- 広々とした空間とパーテーションにより柔軟な学びの環境を提供
- 様々な形状や高さの机や椅子を用意

【グループC】

- 集中とリラックスを分けた機能的な空間
- グループ活動と個別作業に最適な場所の選択を可能に

これらの教室デザインは、バーチャル空間で実現されたため、現実の技術やコストの制約を受けず、生徒たちは自由に発想を広げられました。このようにして多様な意見を生かしたデザインアプローチは、今後の教育現場にも応用が期待されます。

教室デザインへのさらなる活用

今後、制作した教室についての実証実験を行い、居心地の良さを分析する計画です。また、得られた知見は、現実の教室デザインに取り入れられる可能性があります。特に、ジェンダーの視点からも検証を行い、男子生徒中心とされてきた教室デザインが、女子生徒を含む多様なニーズに合致しているかどうかを検討します。

未来の教室での学び

このプロジェクトにより、VRを介した新しい学びの環境が具体化し、実際の授業にも取り入れられる見込みです。生徒が考案した斬新な教室デザインが、現実の教育現場でも実現する日が来ることは否定できません。多様性を尊重することは、未来の教育の鍵とも言えるのです。

このような取り組みが進められる中で、多様性のある個性豊かな学びの環境が整うことを期待しています。興味のある方は、プロジェクトの詳細を確認してみてはいかがでしょうか。詳細についてはこちらをご覧ください。