卵殻をアップサイクルした新たな素材の可能性
株式会社イトーキがキユーピー株式会社と共同で開発した、卵殻を利用した天板素材。これは、現在注目されているサステナブルな取り組みの一環で、環境に優しいデザインとしての波を広げています。ここではそのプロセスと、実際にどのような家具が生み出されるのかを詳しくご紹介します。
プロジェクトの背景
キユーピーは、年間約25万トンもの鶏卵を使用している日本の大手製食品企業です。その中で、製造過程で発生する卵殻は年間約2万8千トンにも及びます。これらの卵殻はしばしば廃棄されるのですが、キユーピーグループはその100%再資源化を目指して取り組んでいます。この理念に賛同したイトーキが具体的な実現に向けて手を組みました。
素材開発のプロセス
新しい天板素材の開発では、まず卵殻を粉砕し、その粉末を透明樹脂でコーティングして立体的な質感を持たせる工夫がなされました。初期の試作では、卵殻そのものが意匠として浮かび上がらないことが課題でしたが、「見えるデザイン」に転換しました。
具体的には、卵殻の粗目を選ぶことで意匠的な表現を実現することができ、自然な凹凸を持たせるために最終的なプレスを避ける手法が取られました。これにより、見た目の美しさだけでなく、質感も楽しめる表面が完成しました。試験段階では約30kgの卵殻が用いられ、乾燥や偏りなどの技術的な課題を克服するために、多くの検証が行われました。
共同プロジェクトのメンバーの思い
このプロジェクトをリードしたのは、イトーキの井上徹。彼は、キユーピーからのサステナブルな提案に即座に関与し、卵殻という新たな資源に目を向けた意義深い経験を語っています。「卵殻の密度や細かさによって、試作時に得られる表情の違いを楽しく実感しました。」と彼は述べています。
一方、キユーピーの望月康次も、エントランスの重要性を強調しつつ、サステナブルな優れた提案ができたことに感謝していました。デザインはグループ従業員の投票で決まるなど、社内でのコミュニケーションも重視されています。エントランスのリニューアルは2026年に完了する予定です。
今後の展望と他のアップサイクル事例
今回の取り組みは、単なる天板素材の開発にとどまらず、企業理念を空間として体現するための新たな道を開くものです。イトーキは今後もサステナビリティを体験できる家具や空間づくりに力を入れていく考えです。
これまでのアップサイクル事例としては、トヨタ自動車とコラボした廃プラスチックを利用した家具や、コーヒー豆かすを使った質感と香りを活かした素材開発なども進めています。さらなる取り組みを通じて、豊かな環境設計を進化させる計画です。
まとめ
イトーキとキユーピーの協業による卵殻を用いた天板素材は、持続可能な社会への意識を高めるための一歩として注目されます。今後の展開に期待しつつ、私たちもそれに貢献できるよう心がけていきたいものです。サステナブルな家具の未来は、今まさに