世界初のSiC CMOSパワーモジュール、優れたモーター駆動技術の実現

画期的なモーター駆動技術の誕生

国立研究開発法人産業技術総合研究所の先進パワーエレクトロニクス研究センターは、株式会社明電舎との共同研究により、世界初のSiC CMOS駆動回路を組み込んだSiCパワーモジュールを活用したモーター駆動技術の開発に成功しました。この新しい技術は、高速スイッチング動作時に発生するノイズを大幅に低減し、モーターシステムの信頼性を向上させることを目指しています。

SiCパワーデバイスの特長と課題

SiC（シリコンカーバイド）パワーデバイスは、その高い省エネルギー性能から、電気自動車やハイブリッド車のモータードライブ制御など、多くの分野での利用が進んでいます。しかし、これまでのSiCパワーデバイスは極めて低速なスイッチング動作に限定されており、本来のエネルギー効率を最大限に引き出せていません。この要因の一つは、高速スイッチング時に発生するノイズが、駆動動作の正確性を妨げるリスクを伴うことです。

新技術の概要

今回、産総研はこれまでの研究成果を基に、SiC CMOS駆動回路を用いた新たなモーター駆動方法を開発しました。この手法では、SiCパワーデバイスの高速スイッチング動作が可能となり、エネルギー損失を約10分の1に低減することが実証されています。さらに、現行のSiCパワーモジュールを新しいSiC CMOSパワーモジュールに入れ替えるだけで、容易にその恩恵を享受できることがわかりました。

高速スイッチングとノイズ低減の実現

研究の過程では、現行のドライバー回路との互換性を保ちながら、高速スイッチング動作を実現する手法が確立されました。この新たな駆動方法によって、ノイズの影響を最小限に抑えることが可能となり、従来のパワーデバイス用ドライバーと合わせて使用しても、高速スイッチングが実現できることが確認されました。これにより、モーターシステムはより高い信頼性を持つことが期待されています。

実用化に向けた今後の展望

今後、研究チームはこの技術をさらに発展させるため、モーターシステムの省エネルギー性能の実証や、スイッチング速度の向上に向けた取り組みを進めていく予定です。この新しい技術を通じて、電気自動車などの幅広い分野でのフィードバックを受け、持続可能な社会の実現に向けた貢献を果たしていくことが期待されています。

まとめ

産総研と明電舎との共同研究によって、SiC CMOS駆動回路を内蔵したパワーモジュールは、モーター駆動の新たな未来を切り開く重要な一歩です。省エネルギーを促進し、カーボンニュートラル達成への道筋をつけるこの技術は、今後の電気機器メーカーによるさらなる実用化を期待されます。

この研究成果の詳細は、2025年3月20日に開催される「令和7年電気学会全国大会」にて発表される予定です。業界の未来を変える革新技術に注目が集まります。