偏光板アートの達人、島崎勝信氏が描く未来への挑戦
「光の魔術師」への転身
81歳の島崎勝信氏は、足立区を拠点に活動する有限会社プリントアートの代表であり、偏光板を使った独自のアート分野を切り開いてきたアーティストです。彼は、液晶ディスプレイの必須部品として知られる偏光板に新たな可能性を見出し、40年以上にわたりアートと科学の境界を超える作品を創作してきました。今回は、その思いと成果を紹介します。
偏光との運命的な出会い
竹の塚にあるプリントアートの事務所には、島崎氏の手による多彩な偏光板アートが展示されています。今から約40年前、当時グラフィックデザイナーだった彼は、マジックミラーを使った作品を考えている中で偏光板と出会いました。偏光板を使ったことで、想像もしなかった色の現れに出会い、新たな道を歩む決意を固めたのです。
「偏光板を重ねることで、特定の光を通すことができ、それが私のアートに新たな次元をもたらしました。自分の視点を変えることによって、世界の捉え方が変わる可能性を感じました」と彼は語ります。
科学とアートの融合
島崎氏の作品は、単なる視覚的な美しさだけでなく、光の性質や科学を理解する手助けにもなります。彼は子どもたちに「この色はどこにあるの?」と問いかけ、「色は光の中にある」と教えています。この教えを通じて、若い世代にも光の科学の面白さを伝えているのです。
1995年に東京都発明展で東京都知事賞を受賞した後、特許の取得には多くの苦労が伴いましたが、彼はその特許を放棄しました。「このアートを多くの人に楽しんでもらいたいと考え、自らのものとして独占することは望まなかった」と語る姿には、彼のアートに対する純粋な情熱が表れています。
偏光板の新分野への挑戦
また、島崎氏はアートだけでなく、偏光板の特性を活用したセキュリティ製品の開発にも成功しました。彼が開発した「ミラーレン®」は、パソコンやスマートフォンなどの液晶画面の覗き見を防ぐための技術です。この製品は、画面の明るさや色彩を保ちながら、周囲からは全く見えないという特性を持っています。
「この技術は、誰にでも試してもらいたい。真似するのは自由だと考えていますが、簡単にはできないだろうとも思っています」と、自信をもって語る姿は彼の経験に裏打ちされています。この技術は特にテレワークの普及に伴い注目を集め、情報セキュリティ対策としても需要が高まっています。
展示と教育への情熱
現在、彼の偏光板アートは東京都北の丸公園にある日本科学技術館をはじめ、全国の科学館で展示されています。科学館ではワークショップも開催しており、子どもたちが科学に興味を持つきっかけとなっています。「科学館での展示は、子どもたちに光の性質や科学の楽しさを伝える重要な場です」と語る島崎氏。
今後の夢とビジョン
彼の夢は、癒しをテーマにしたアート美術館を開くことです。「誰かが悩んでいる時に、ふらっと立ち寄れる場所として、心を癒す作品を集めた美術館を作りたい」と語ります。この夢は、彼自身の制作活動に対する姿勢を象徴しています。「今を一生懸命やることで、未来がどうなっていくのかを楽しみながら生きている」と彼は語ります。
彼の情熱は、偏光板アートというユニークな表現を通じて、世代を超えた多くの人々にインスピレーションをもたらしています。2025年2月12日から14日まで、東京ビッグサイトで開催される「第99回東京インターナショナル ギフト・ショー」にも出展予定です。ぜひその目で、彼の創造する「偏光板アート」の魅力に触れてみてください。