岡山大学が発見した新しいペプチド配列がタンパク質合成を制御
岡山大学、東京科学大学、東京大学の研究者たちが共同で進めた研究により、タンパク質合成を停止させる新規ペプチド配列が明らかになりました。これにより、生命の根幹をなすタンパク質の合成過程に関連する新しいメカニズムが示され、その重要性が浮き彫りになっています。
研究の背景と重要性
タンパク質は、DNAにコードされた遺伝子情報に基づいて合成される重要な生体分子であり、このプロセスは「翻訳」として知られています。リボソームと呼ばれる細胞内の機械装置がこの翻訳を実行しますが、合成が容易な配列だけでなく、合成を困難にする「難翻訳配列」が存在することが徐々に明らかにされています。これまでは、多くのアミノ酸配列が難翻訳であることが認識され、遺伝子発現の調整に影響を及ぼす可能性も指摘されています。
しかし、難翻訳の現象がどのように起こるのか、具体的にどのくらいのアミノ酸配列が難翻訳であるのかは、未だに明確には解明されていません。今回の研究では、大腸菌をモデル生物として、新たな難翻訳配列を探索する新技術が開発され、その中で新たに同定されたのがPepNLとnanCLというペプチド配列です。
新しいペプチド配列の発見
PepNLとnanCLの役割
研究チームは、大腸菌のゲノムから大規模な解析を行い、これら二つの新しい難翻訳配列を同定しました。特に注目すべきは、PepNLペプチドが翻訳過程でリボソーム内に「ヘアピン」状の構造を形成し、これがタンパク質合成を阻害するメカニズムであることが判明した点です。この発見は、翻訳がどのように停滞するかを理解する上で、新たな鍵を握っています。
結果と今後の展望
さらに、細胞内のアミノ酸濃度が高い場合には、終止コドンをスキップすることで、PepNLによる翻訳阻害が回避されることも明らかになりました。こうしたメカニズムの理解が進むことで、生命科学におけるさらなる応用が期待されます。
この研究成果は、2025年3月8日、国際的な学術雑誌「Nature Communications」に発表され、その重要性が広く認知されることになるでしょう。また、難翻訳を利用した新たな遺伝子設計や、制御技術の開発が進むことで、医療やバイオテクノロジー分野における革新的な進展が期待されています。
研究者たちの声明
今回の研究を主導した岡山大学の茶谷悠平准教授は、「我々の発見は、タンパク質合成の制御に関する理解を深めるだけでなく、それを基にした創薬や医療技術の発展にも寄与するものと信じています」と語っています。
この新しいペプチド配列の発見が、次なる科学の扉を開くきっかけとなることを期待し、今後の研究の進展を注視していきたいところです。