ヒスタミンH3受容体の新たな展望
東京理科大学の先進工学部生命システム工学科にて行われた研究により、ヒスタミンH3受容体(H3R)の恒常的な活性を著しく増強する4つのアミノ酸変異が特定されました。これにより、神経疾患の治療における新しいアプローチが期待されています。
研究の背景
H3Rは中枢神経系の前頭葉に位置し、神経伝達物質の放出を調整します。食欲に関する調節や、注意欠陥多動症(ADHD)、統合失調症、パーキンソン病、アルツハイマー病など、さまざまな神経疾患に影響を与えるため、H3Rは重要な治療ターゲットとされてきました。これまでH3Rは本質的に高い恒常的活性を示すことは知られていましたが、その活性を制御する構造的因子はあまり理解されていませんでした。
研究の成果
本研究グループは、出芽酵母を活用した実験から、特定の4つのアミノ酸変異(L732.43M、F193ECL2S、S3596.36Y、C4157.56R)がH3Rの恒常的な活性を著しく増強することを示しました。これらの変異は受容体の構造的不安定さに深く結びついているとされ、この分野の新しい理解をもたらすものです。
研究チームは、これらの変異を持つ二重変異体を生成し、シグナル伝達活性を調査しました。その結果、すべての変異体で恒常的な活性の顕著な増加が見られ、一部の変異ではEC50値の減少が確認されました。
さらに、実験では放射性標識モードを使用して、これらの変異がヒスタミンとの結合親和性には影響を与えず、活性を促進することが証明されました。この発見は、H3Rの活性を向上させる新たなメカニズムの理解に寄与しています。
GPCR研究の進展
GPCR(Gタンパク質共役型受容体)は、細胞内外の信号伝達において重要な役割を果たす分子群です。ヒスタミンH3受容体の研究成果は、他のGPCRの活性化や新薬開発に関する理解を深めるものと期待されています。
実験結果によると、H3Rの変異がもたらす変化は、受容体が不安定化することで恒常的な活性を高めることを示唆しています。この重要な原理が見出されたことで、H3Rは今後神経疾患に対する新たな治療薬の開発に向け、大きな意義を持つものであると考えられます。
今後の展望
本研究を主導した白石教授は、今回の成果が脳関連疾患の理解を深めることに繋がると述べています。また、より安全な医薬品設計への道を開くことも期待され、将来的には人工的なGPCR設計にも貢献する可能性があります。
研究の意義
この研究結果は、2025年12月22日に国際的な学術誌『Protein Science』に発表され、GPCR研究の新たな地平を開く一助となるでしょう。将来的には、特定の受容体の活性増強に関連する新しい治療薬の開発に寄与し、さまざまな神経疾患の治療効果を高めることが期待されています。
このように、H3Rの構造的な研究は、今後の医薬品開発や神経科学に大きな影響を与える可能性があります。