2023年、三重大学とキュアコード株式会社は共同で心不全患者向けのスマートフォンアプリ「ハートサイン」を基に、新たな臨床試験「SHARE-CR」をスタートさせました。この研究は、急性冠症候群(心筋梗塞)を患う患者を対象に、アプリ機能にFitbitを組み合わせたリモート運動指導の効果を検証することを目的としています。
ハートサインとは
「ハートサイン」は、患者が日々の健康状態を記録・管理できるアプリです。ユーザーは血圧、脈拍、体重、症状などを入力し、それを医師と共有することで、より良い健康管理を実現します。このアプリは、iOSとAndroidの両方に対応しており、すでに多くの心不全患者に利用されています。最近開始されたSHARE-CR研究では、従来のアプリ機能に加えて、Fitbitを活用した新機能が追加され、急性冠症候群患者の症状悪化予防に貢献することが期待されています。
研究の目的と背景
心不全の患者数が増える中、再入院予防や予後改善のためには、心臓リハビリテーションの普及が求められています。従来の医療機関の制約から、十分な運動療法が提供できないケースが多々ありました。そのため、入院中からアプリを利用することで、患者が退院後も医療者と遠隔で連携を取りながら、リハビリテーションを受けられる仕組みが必要です。これにより、患者の生活の質を向上させるとともに、医療者の負担軽減にも寄与することでしょう。
研究代表者である三重大学の土肥薫教授は、「心不全患者の増加が予想される今、リモートでの健康管理や運動指導が重要です」と述べています。また、キュアコード株式会社の代表取締役である土田史高も、このアプリによって患者が使いやすい運動量の管理を行えるようになることが期待されていると語っています。
SHARE-CR研究の内容
SHARE-CR研究では、2つのグループで比較が行われます。ひとつはアプリ「ハートサイン」とFitbitを組み合わせたグループ、もうひとつは従来のアプリ単独でのグループです。Fitbitを装着した患者は、運動中の心拍数や運動量を記録し、担当の医師や理学療法士がそのデータをもとにリモートでの指導を行います。これにより、定期的な運動指導が可能となり、患者は積極的に健康管理に取り組むことができるようになります。
IT技術による健康管理の可能性
ハートサインアプリは、ただの機能としてだけでなく、患者自身の健康情報をもとに行動を促す仕組みを有しています。将来的には、AI技術の導入により、より精度の高い健康管理が可能になることが予想されます。また、PHR(個人健康記録)の活用により、患者の健康データを連続して管理できる仕組みも整えていく予定です。
まとめ
今回のSHARE-CR研究は、心不全患者の健康状態をリモートで管理するための新しいアプローチとなるでしょう。デジタル技術を駆使することで、患者自身が自己管理を行いやすくなり、さらには医療者との連携も強化されることで、より質の高い医療とリハビリテーションが受けられる未来が期待されます。この取り組みが、心不全患者にとっての新たな希望となることを願っています。