新たな研究プラットフォームが目指すマラリア治療の革新
2023年3月、Tokyoのエルピクセル株式会社、スイスのMedicines for Malaria Venture(MMV)、イギリスのUniversity of Dundee(UoD)との共同プロジェクトが公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)において支援を受けることが発表されました。このプロジェクトは「AIを活用したCell Paintingアッセイによる抗マラリア化合物作用機序解析プラットフォームの開発」として注目を集めています。
マラリアの深刻さ
世界保健機関(WHO)の報告によると、2023年には約2億6300万件もの新規のマラリア症例が発生し、597,000人という多くの命が失われています。この状況は公衆衛生上の重大な脅威であり、特に東南アジアや東アフリカでは抗マラリア薬に対する耐性が問題視されています。アルテミシニンを基にした薬剤の効果が薄れていく中、今こそ新しい治療法の開発が求められています。
Cell Painting技術とは?
新たなプラットフォームで使用される「Cell Painting」とは、特定の染色技術を用いてマラリア原虫の細胞を可視化し、さまざまな化合物がそれにどのような影響を与えるのかを解析する手法です。
このプロジェクトでは、化合物の生物学的影響を理解するために、細胞構造やオルガネラを定量化し、化合物の作用機序を速やかに特定できる体制を整えています。
研究開発の進展
本プロジェクトの背景には、抗マラリア薬の効果が減少している現実があります。耐性を持つマラリア原虫に対抗するための新たなアプローチが必要とされており、Cell Paintingプラットフォームの開発はその一環として位置づけられています。
この技術を用いることで、医薬品のスクリーニングにおいて最も重要な化合物を特定しやすくなり、従来とは異なる作用機序を持つ新規化合物の選別が可能になります。
共同研究チームの役割
具体的には、MMVが多様な作用機序を持つ化合物のデータベースのキュレーションを行い、UoDはマラリア原虫の培养の最適化や化合物の処理を担当します。そして、エルピクセルはAIを駆使して作用機序を分類するモデルを開発し、その技術をクラウドプラットフォームに統合します。これにより、探索プロセスの迅速化とコスト削減が期待されているのです。
AIの役割
エルピクセル株式会社は、ライフサイエンスとAIに強みを持つ企業であり、これまでに医療分野での画像解析技術を多くの企業と連携しながら開発してきました。今回は、画像解析技術を基軸として、創薬研究をさらに進化させることが期待されています。AI技術により、寄生虫に対する生物学的影響を迅速に解析し、効果的な治療法の開発につなげる手助けをしています。
まとめ
このエキサイティングなプロジェクトは、マラリアに対する新しい治療法の開発を進めるための重要なステップとなります。国際的な共同研究を通じて、効果的な抗マラリア化合物の探索とその作用機序の解明が進むことを期待しています。この試みが、世界中の人々の健康向上に寄与することを願っています。